両親殺害事件で終身刑の兄弟を減刑、仮釈放の可能性も 米カリフォルニア州

1989年に米ロサンゼルス郊外の高級住宅地ビヴァリーヒルズで両親を殺害したとして有罪とされ、仮釈放の可能性のない終身刑に服してきた兄弟に対し、ロサンゼルスの裁判所は13日、減刑を決めるとともに、仮釈放への道を開いた。 マイケル・ジェシック判事は、エリック・メネンデス受刑者(54)とライル・メネンデス受刑者(57)の刑を、50年〜終身の刑に変更した。仮釈放の可能性については、来月開かれるカリフォルニア州の仮釈放委員会の審問で決定される。 ロサンゼルス郡地方検事は、兄弟は更生させられていないとして、減刑に強く反対していた。一方、兄弟は、両親から長年にわたって性的虐待を受け、正当防衛のために殺害したと主張していた。 この事件は本やドキュメンタリーで取り上げられ、いまも多くのアメリカ人の間で意見が割れている。 ■兄弟が陳述 この日の法廷では、判事が量刑の見直しを決定した後、兄弟は自分たちの犯行を振り返り、両親や親族の心情に思いをめぐらせた。犯行時、兄弟は18歳と21歳だった。 エリック受刑者は、息子たちが銃を手にして発砲したのを見て、両親は「衝撃、混乱、裏切り」を覚えただろうと述べた。 ライル受刑者は声を震わせながら、親族について、「私はあなたたちにうそをつき、あなたたちに公衆の面前で恥をかかせた」と言った。 兄弟は共に、自分たちの行動について謝罪の言葉を述べた。また、もし刑務所から出られたら、性虐待の被害者らと一緒に活動したり、受刑者を支援したりしたいという希望を語った。 この日の審理の大部分は、兄弟がこの30年間、刑務所で何をしてきたかに焦点が当てられた。 兄弟の家族や、刑務所で兄弟と一緒に活動した人たちは、兄弟が修了した教育コースや、受刑者の生活向上のために作ったプログラムについて詳しく説明した。 ジェシック判事は、服役中の兄弟の活動を「注目に値する」としながらも、1996年に言い渡された仮釈放なしの終身刑は、当時としては妥当だったとした。 ■「素晴らしい日」 判事が減刑の判決を読んでいる間、兄弟は法廷に詰めかけた弁護士や家族らに笑顔を見せ、手を振った。 家族らは笑顔で抱き合った。 マーク・ゲラゴス弁護士は、「今日は素晴らしい日だ」、「彼らを家に帰すのに近づく大きな一歩だ」と、裁判所の前で記者団に話した。 兄弟のいとこのアナマリア・バラルト氏は、家族は喜んでいると説明。仮釈放は「困難なプロセス」だが、「彼らを家に帰らせることになるのであれば、喜んでその扉をくぐる」と述べた。 子どものころから兄弟と親しかったという同氏は、この日の法廷で、兄弟に「人生の第2のチャンス」が与えられるべきだと訴えていた。 検察は兄弟の釈放に激しく反対している。兄弟について、犯行直後からうそをついていたとし、責任を完全に負おうとせずに「言い訳」を続けていると訴えてきた。 裁判ではハビブ・バリアン副地方検事が、「彼らが刑務所で前向きな行動をとったことは間違いない」と述べた一方、残忍な殺人事件での陪審員の全員一致の評決を覆すのであれば、「彼らが本当に更生されているかを確認する」ことが重要だと主張した。 事件は1989年8月20日に発生。兄弟は、帰宅すると両親の遺体があったと警察に通報した。 両親はテレビを見ていた時に散弾銃2丁で13発撃たれていた。犯行の残忍さから、捜査当局は当初、マフィアによるものとみていた。 しかし、兄弟は心理学者への告白をきっかけに、1990年に逮捕・起訴された。 1993年に始まった裁判では、弁護団は、兄弟が長年にわたって父親から精神的、肉体的、性的虐待を受けていたとした。これに対し検察は、両親の財産1400万ドル(現在のレートで約21億円)を狙った犯行だったと主張。兄弟は何日も前に散弾銃を購入するなど、周到に準備していたとした。 裁判は最初、陪審団の判断が一致せず審理無効となったが、1995年の2回目の裁判で、兄弟に第1級殺人罪での有罪判決が出された。 この事件は最近、米ネットフリックスのドラマ「モンスターズ メネンデス兄弟の物語」で再び関心を集めた。他にも、この事件を取り上げたドキュメンタリードラマが公開されるなどした。 キム・カーダシアン氏やロージー・オドネル氏といった有名人らも注目し、兄弟の釈放を求める声が上がった。昨年10月にはジョージ・ガスコン地方検事(当時)が、量刑の見直しと仮釈放を裁判所に勧告すると発表した。 兄弟の仮釈放については、6月13日に開かれるカリフォルニア州の仮釈放委員会で審理される見通し。 同州のギャヴィン・ニューサム知事は、2人が釈放された場合に市民に危険が及ぶリスクについて評価するよう、仮釈放委員会に要請した。 (英語記事 Judge cuts Menendez brothers' sentences giving them chance of parole)

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