ジェネシスクラウド、AIで顧客の意図を理解するコンタクトセンターを展開へ

コンタクトセンターソリューションの米Genesys Cloud Servicesは5月14日、事業戦略説明会を開催し、AIによって顧客の意図を理解し、顧客に最適化した体験を実現するというコンタクトセンターの新たな姿を示した。それに向けたAIなどの新サービスを順次展開している。 まず登壇したジェネシスクラウドサービス 代表取締役社長のポール・伊藤・リッチー氏が、日本のビジネス状況を紹介した。直近の決算となる2025年1月期の業績では、クラウド型プラットフォーム「Genesys Cloud」の売上高が前年比40%増、導入企業数が同20%増となり、特に保険やクレジットカードなど金融業界での採用が70%増加したという。日本法人の従業員数も13%増加し、間もなく100人体制を実現できるとした。 Genesys Cloudは提供から8年が経過し、伊藤氏は、導入企業が最新技術の活用により顧客対応の高度化や顧客満足度の向上、優れた顧客体験の提供を実現していると強調。日本は、まだオンプレミス型のコンタクトセンターシステムを運用する企業が多いものの、減価償却を終えた企業が順次Genesys Cloudへ移行しているといい、今後も増えるとの見方を示した。 また同氏は、独自調査の結果も紹介。日本のコンタクトセンター利用者は、世界と比べて、企業が顧客の意図を理解して先回りで適切な対応や提案することを望む一方、毎回同じ担当者が対応することを求めていないという特徴があるとした。この点が、将来のコンタクトセンターにおけるポイントになるという。 次に登壇した会長 兼最高経営責任者(CEO)のTony Bates氏も、グローバルで8000以上の導入企業のうち6500社以上がGenesys Cloudを採用していると明かした。2025年1月期第4四半期(2024年11月~2025年1月)のGenesys Cloudの年間経常収益(ARR)は19億ドルに上り、過去3年の売上継続率(NRR)も120%以上だという。また、Genesys Cloudの各種AI機能を利用する企業は45%以上だとした。 Bates氏は、Genesys Cloudの採用企業が通話やチャット、ウェブといった各種の顧客接点での情報を集約、連携するだけでなく、AIの活用によりチャットなどを通じた顧客との対話のさらなる拡大、オペレーターやスーパーバイザーの業務効率化とコスト削減を実現し、収益の成長を実現しているとアピール。AIなど最新機能をいち早く提供できるのがクラウドだとし、グローバルでも引き続きオンプレミスからクラウドに移行する企業が増えることを期待していると述べた。 同社は、「エクスペリエンスオーケストレーション」というコンセプトを掲げる。Bates氏によれば、現在の顧客対応は、企業であらかじめ定義や設計しているルールなどに沿ったやりとりが中心であり、AIを活用したチャットボットなどでの対応もこれに準じている。エクスペリエンスオーケストレーションでは、過去のやりとりの記録、会話などから分析する顧客の感情、顧客の環境変化といった各種の情報をリアルタイムにオーケストレーションし、顧客一人ひとりの意図や要望などに共感し適応していく「ハイパーパーソナライゼーション」の顧客体験を実現するという。 Bates氏は、将来のコンタクトセンターに向けて(1)AIの仮想エージェントを駆使した自動化、(2)AIがオペレーターやスーパーバイザーをリアルタイムに支援、(3)ハイパーパーソナライゼーションされた顧客体験の動的な提供、(4)顧客体験と従業員体験の継続的な最適化――というステップで進むと説明し、Genesys Cloudを通じて実現していくと語った。 最高製品責任者のOlivier Jouve氏は、これまでにチャットボットなどのエージェントの提供、IBMのAI基盤「Watson」との統合、音声/テキストのAI解析などを進めてきたとし、2025年4月時点でGenesys Cloud採用企業におけるエージェント数が約10万8000個、累計で46億件の顧客との会話が実行されていると説明した。 Genesys Cloudでは、SalesforceやServiceNow、Oracleといった多彩なエコシステムパートナーとの連携、1500以上のフィーチャーを持つAPIを通じたあらゆる顧客接点からの情報の統合に加え、最近ではソーシャルメディアが身近な若年世代との接点情報を統合する「Genesys Cloud Social」も提供。エクスペリエンスオーケストレーションとしてのプラットフォーム強化を進め、Bates氏が示した将来のコンタクトセンターを実現していくAIの新機能群を紹介した。 仮想エージェントの「Genesys Virtual Agent」では、顧客との対話履歴や大規模言語モデル(LLM)を活用して、シナリオ型から顧客に応じたインタラクション型の対話を行えるとし、活用効果では通話完了率で20~50%、初回連絡時の問い合わせ解決率で50%の向上が図られるとした。 また、スーパーバイザーの業務支援となる「Genesys Cloud Virtual Supervisor」では、顧客との膨大なやりとり内容の要約や洞察の抽出、顧客対応品質の自動評価、AIによる改善提案などができ、活用効果の一例では手作業だった評価に要する時間を35%削減するという。 さらに2025年下期には、AIエージェントの作成や開発、テスト、統合的な運用、コンプライアンス管理などができる「AI Studio」のリリースも予定する。例えば、ホテル会社は宿泊受け付けの担当者がAIエージェントのチャットボットを作成する場合、自然言語で「宿泊予約の受付業務を行う」といった入力をするだけで、標準的な仕組みが設定され、さらに想定される宿泊客からの要望などを音声やテキストでチャットに入力を進めることで、ノーコードによりカスタマイズ開発を行える。 Jouve氏は、こうしたGenesys CloudのAI機能群の活用により、処理時間の8~15%の短縮やセルフサービス利用率の50~70%向上といった効果が見込まれるとし、企業ではハイパーパーソナライゼーションされた顧客体験を提供可能なコンタクトセンターへのステップを進められるなどと説明した。

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