鹿児島県 押収オカヤドカリ飼育状況公開 「一刻も早い放逐を」 死亡130匹以上 奄美署

奄美署は22日、国の天然記念物オカヤドカリを無許可で所持したとして中国籍の男が逮捕された事件で、押収した約5200匹のオカヤドカリの現状を公開した。奄美市内の保護施設で飼育管理されているが、8日に移送された時点で約130匹が死に、現在も密集した状態で飼育されており、正確な生息数は分かっていない。関係者からは一刻も早い自然環境への放逐を望む声が上がっている。 事件は6日から7日にかけて発覚。4月30日から奄美市内のホテルに宿泊していたいずれも20歳代の中国籍の3人のスーツケースから、合計約160㌔のオカヤドカリが見つかった。 同種は、1970年に国の天然記念物に指定され、無許可の捕獲・所持が禁止されている。ホテルからの通報で駆け付けた奄美署が7日、文化財保護法違反で逮捕した。8日に送検され、3人は容疑を認めているという。 捜査関係者の話によると、3人は4月下旬頃、関西国際空港発の航空機で奄美大島入り。同市内でレンタカーを借り、5月6日にかけて島内各所で捕獲したという。いずれも素手によるもので道具や餌は使用していないという。 販売目的の捕獲かどうかなど動機は捜査中だが、中国では、食用のほか観賞用として飼育されることも多く、特にムラサキオカヤドカリは、高値で取引されているという。2年前には沖縄で、同種を販売目的で捕獲したとして、中国籍の夫婦が有罪判決を受けている。 奄美大島に生息するオカヤドカリは3種(ムラサキオカヤドカリ・ナキオカヤドカリ・オカヤドカリ)いるが、今回の事件で押収されたヤドカリの約90%がムラサキオカヤドカリだったという。 12日から13日にかけ約14時間をかけ、生死や種別の調査を行った奄美海洋生物研究会の興克樹会長(54)は「現在の飼育環境は自然環境とは大きく異なる。できるだけ早く放逐することが望ましい」と話した。 押収されたオカヤドカリは現在、証拠品の扱い。今後、裁判所の判断を待って処分を決めることになる。 同市教育委員会文化財課の平城達哉学芸員(33)は「文化庁と県を交え協議することになる」と話し、個人的な意見として、「オカヤドカリはこれから繁殖期(6~8月)を迎える。海に放された幼生(ゾエア)は、海を漂い生息域を広げる。生態系への影響を最小限にするためにも放逐を急ぎたい」と話した。

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