米政権は5月22日、ハーバード大学の留学生受け入れ資格を取り消すと発表、ハーバード側は“違法“と裁判所に提訴した。予兆はすでにあった。アメリカで学ぶ邦人留学生たちが、突然、滞在資格や留学ビザを取り消されるケースが相次いでいる。本来であれば、犯罪を犯したりしないかぎり起こらない事態のはずだ。いったい何が起こっているのか。 * * * ■滞在資格がいつの間にか「取り消し」 アメリカに留学中の学生にとってはまさに悪夢だ。 外務省によると、4月以降、全米各地の邦人留学生から「ビザが取り消された」「滞在資格が抹消された」という相談が増加しているというのだ。両方を取り消されたケースもあるという。 ユタ州のブリガム・ヤング大学の博士課程で情報科学を学ぶ恩田賢(おんだ・すぐる)さん(41)が異変に気づいたのは、4月8日。大学の留学生課から「あなたの滞在資格が国土安全保障省によって取り消されています」と、メールで連絡を受けたのだ。 このような場合、米国土安全保障省は「15日以内の国外退去」を求めている。恩田さんの滞在資格は同月4日付で抹消されていた。大学がその記録を見つけたのが8日で、残された日数はその日を含めて12日しかなかった。 ■家族7人で米国に暮らしていた 恩田さんは、東京工業大学(現・東京科学大学)を卒業後、精密機械メーカー勤務を経て、家族とともに6年前に渡米した。博士課程に在籍しながら、大学からリサーチの仕事を請け負って生計を立てている。子どもは5人いて、うち2人は米国生まれだ。 「妻もショックを受けていました。子どもたちは学校に通い、友だちもいる。国外退去となれば、家族全員の運命が狂ってしまう」(恩田さん) ■帰国も考え荷物をまとめた だが、落ち込んでいる時間はなかった。一刻も早く事態に対応する必要があった。 留学生課の職員は、恩田さんに2つの提案をした。 (1)米国に滞在したまま滞在資格回復申請を行う。その場合、結果が判明するまで6~12カ月かかる。(2)定められた期限内に出国して再度、滞在資格取得を申請する。ただ、滞在資格が抹消されたという記録が残るため、再申請のときに問題となる可能性がある。