「大川原化工機」社長らの起訴が取り消された事件の反省などを踏まえ、警視庁公安部は今年度から、20~40代の若手・中堅の捜査員を、事件捜査の機会が多い刑事部などの他部門へ派遣する取り組みを始めた。部全体の捜査力の向上とともに、緻密かつ適正に捜査指揮を執ることのできる人材の育成を図る。 今年度の派遣は、警部補と巡査部長計6人。派遣先は、殺人事件などの凶悪事件を扱う刑事部の捜査1課や、防犯カメラの解析を担当する同部の捜査支援分析センター(SSBC)、経済事件などを扱う生活安全部の生活経済課などで、任期は1~2年。公安部と併任の形で所属し、各担当の最前線で事件捜査に従事する。 公安部は主に、テロ組織や過激派、外国スパイなどを対象としており、捜査員らは事件の未然防止のための対策や、内偵捜査に当たっている。一方、被疑者の逮捕など、立件に至る事件捜査の経験値は刑事部などに比べて少なく、捜査員一人一人の捜査力の向上や、適切な捜査指揮が課題となっていた。 警察幹部は「起訴取り消しになった時点で、捜査に不十分な点があったということ。重く受け止めている」と話す。近年は組織に属さない「ローンオフェンダー」など、新たな脅威による重大事件も相次いで発生している。今後、より難易度の高い事件への対処が求められることも想定し、中長期的な視点で人的基盤の強化を進める方針だ。(緒方優子)