機械メーカー「大川原化工機」への捜査の違法性を巡る裁判で、28日、二審の東京高裁は一審に続き国と東京都に賠償を命じた。これまでの裁判では、当時、警視庁公安部で事件を担当した現職の警察官が「決定権を持っている人の欲で立件した」などと証言したことなども話題となっていた。 経緯としては、公安部が大川原化工機に対して「軍事転用可能な製品を不正に輸出しているのではないか」と疑惑をかけ、大川原化工機社長ら3人を逮捕起訴、勾留中にがんで相嶋静夫さんが亡くなった。その後、初公判の直前に検察が起訴を取り下げ、大川原化工機は「事件の捏造で違法捜査」だとして損害賠償請求の訴訟を行った。 検察、警視庁公安部、さらには経済産業省まで関わるなど、複雑に見えるこの裁判について、テレビ朝日社会部の吉田遙記者に聞いた。 ━━今回捜査を行った警視庁公安部とは何を捜査する部署なのか? 「基本的にはテロを未然に防いだり、デモをする人たちを監視したりする役割があり、様々な部署に分かれている。今回問題になったのは海外への不正輸出がないか捜査している部署だ」 ━━今回のように公安部の捜査手法が裁判で取り上げられることは“異例”なのか? 「これまでも国や捜査機関を訴える裁判はあったが、今回のように捜査に携わった公安部で事件を担当した現職の警察官が法廷で証言した点は異例だったと言えると思う」 ━━勾留中にがんで亡くなった相嶋さんのご遺族にも取材されたそうだが、何を話したのか? 「相嶋さんの奥様は静岡・富士宮市にお一人で住んでいる。終の住処として富士山が見える家を買い、本来であればそこで楽しい老後を過ごすはずだったが、ある日突然公安部が来て逮捕されてしまったという。私たちには警視庁に対する強い憤りを話してくれた。特に、起訴取り下げになってからも警視庁から謝罪の言葉は一切ないという。『警視庁は間違ったことをしたのであればきちんと謝罪をしてほしい』と涙ながらに語っていた」