凶器事件多発の韓国…女性自営業者に高まる不安と警戒心

【05月29日 KOREA WAVE】韓国で近年、相次ぐ刃物による襲撃事件で市民の不安が高まっている。2023年のソウル市冠岳区「新林駅無差別刺傷事件」以降、警察は治安を強化し、公共の場での凶器所持を処罰する法律も施行されたが、こうした事件は後を絶たない。専門家らは、犯罪の予防には社会構造的な問題を見つめ直し、孤立や剥奪感、憎悪感情を解消する必要があると指摘する。 京畿道始興市で19日、2人を殺害し、さらに近隣のコンビニ店主や建物のオーナーら2人に凶器で重軽傷を負わせた容疑で、チャ・チョルナム容疑者(57)が緊急逮捕された。同日未明には、酔った40代の男が京畿道華城市の湖水公園付近で刃物を振り回す騒ぎもあった(人命被害はなし)。また最近では、ソウル市江北区の駅近くのスーパーで、キム・ソンジン容疑者(33)が60代女性を殺害、40代女性にも重傷を負わせた。 2023年7月の新林駅事件や京畿道城南市・書峴駅の凶器騒ぎなどを受け、警察は治安体制を強化した。しかし、その後も事件は続いた。2024年2月には、光州市で凶器を持った加害者が警察官を攻撃する事件が発生し、同月、始興市では30代男性が義兄を殺害した後、面識のないコンビニ店員も殺害する事件が起きた。 専門家らは「処罰の強化だけでは凶器による襲撃を防げない」と口をそろえる。 韓国刑司法政策研究院のキム・デグン研究室長は「社会・経済的不安が深まると、人々の生活は困窮し、脱法行為や犯罪、道徳的退廃が広がりやすい」と分析した。 女性の小規模事業者は、殺人・暴行などの凶悪犯罪だけでなく、性暴力やストーキングなど性犯罪のリスクにも直面している。 京畿道女性家族財団が2024年に実施した「京畿道女性自営業者の労働環境実態調査」によれば、女性自営業者1169人のうち約60人が窃盗・詐欺・横領などの財産被害を経験していた。その他の被害としては、言葉の暴力180人、身体的暴力21人、性的暴力21人だった。また、53人は周囲の女性事業者が性犯罪被害に遭っているのを目撃したことがあると答えた。 京畿道で10年間美容サロンを経営する30代女性は、最近の凶器事件の報道に触れ「安全への警戒心が強くなった」と語る。「深夜に帰宅する途中、酔っ払いが店の前にいるだけでも驚く」と言う。1人でワックス脱毛サロンを経営する知人は、カーテンを閉めて鍵をかけた状態で、予約時間だけにドアを開けて対応しているという。多くの1人サロン経営者が、常に鍵をかけて営業している。 女性自営業者らは、犯罪のリスクを下げるためにそれぞれ工夫していた。調査では、回答者1169人の半数以上が防犯カメラや出入管理システムを導入しており、31%は遅くまで営業しないようにしていた。 ソウル市は昨年、1人経営の店舗を対象に、警察への通報が可能な「安心回転灯」を支給した。申請者の90%が女性だった。これは、女性経営者が犯罪への脆弱性をより強く感じている証といえる。 国会立法調査処のホ・ミンスク立法調査官は、女性自営業者への暴力は貧困と密接に関係しているとみる。「安全上の問題で自営業者の経済活動が萎縮すれば、本人だけでなく扶養家族や社会全体の経済にも悪影響を及ぼす」として、経済的支援にとどまらず、安全対策の制度化も必要だと強調した。 (c)KOREA WAVE/AFPBB News

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