児福施設職員殺害 「解決見えない」関係者に衝撃 識者はどう見る?

佐賀市の児童福祉施設で女性職員が刃物で切りつけられて死亡した事件で、佐賀県は、殺人未遂容疑で逮捕された同県武雄市の会社員の女性(28)の子供を5月中旬に児童相談所で一時保護し、事件現場の乳児院に入所させていたことを明らかにした。県警は、女性が子供を取り返そうとして施設とトラブルになった可能性があるとみて調べている。 子供や家族を支援する施設で起きた事件に、関係者の間には衝撃と悲しみが広がった。 ◇ ◇ 「痛ましい事件が起きてしまった」。九州地方のある乳児院で責任者を務める男性は声を落とした。男性によると、親から入所の同意が取れていない子供を預かる場合はトラブルに発展することがあり、親が連れ戻しに来るケースもある。男性の施設では地元警察署と情報共有したり、不審者の対応訓練をしたりして万が一に備えているという。 男性は「子供たちが安心して過ごせるよう笑顔で接するようにしているが、潜在的なリスクがあることはいつも念頭にある。親御さんは支援の対象でもあり、安全と支援の間で難しい対応をしている」と話す。 別の乳児院の関係者は「保護者に寄り添うような対応をした直後に起きたのではないか。そこに刃物があるなんて」とつぶやく。保護者への対応に定められたものはなく現場に任されているといい、施設では電子錠や防犯カメラを設置して対策してきた。 事件を受け、面会時にバッグなどを預けてもらうなどの対応を検討するが、限界があるという。「施設からは『面会を控えてください』と言うくらいしかできない。根本的な解決が見えない」と話す。 福岡県は2日付で、県内の乳児院を含む児童福祉施設、児童相談所など関係機関に対し、県条例に基づき策定する安全計画の内容や日中・夜間の施設の管理体制を確認し、来訪者への対応について緊急点検するよう通知した。 一般社団法人日本児童相談業務評価機関(事務局・東京)の代表理事で、西南学院大元教授の安部計彦(かずひこ)さんは、施設と親の関係性を「施設は性善説が基本で、親子の関係をつなげ、寄り添う方針で向き合う。それでも親との対立が想定される場合には複数職員で対応する」などと説明した。その上で今回、事件前に母親が児童相談所を直接訪ね警察も介入する騒動を起こしたことが、児相から施設に伝わっていなかった点を疑問視。「施設で同じトラブルを起こすことを想定し、子供の委託先を変えることも考え得る事案だった。児相が施設に細かに情報を共有するほか、面会を許可するなら児相も立ち会い、不測の事態に備える慎重さが必要だ」と話し、一連の対応を検証する必要性を指摘した。【平川昌範、田崎春菜、青木絵美】

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