警察官を装って「あなたが事件の容疑者になっている」と電話をかけ、現金をだまし取るオレオレ詐欺の被害が急増中だ。都内では1~4月の被害総額が約70億円で昨年同期の23倍に。あらゆる世代の人が被害に遭っていることが特徴の一つで、警視庁は「深刻な事態」として注意を呼びかけている。 特殊詐欺対策本部によると、警視庁が1~4月に把握したオレオレ詐欺(未遂含む)は988件。前年同期は284件で、3・5倍に増えた。 特に増えたのが「警察官かたり」だ。前年同期の12・2倍の706件で、オレオレ詐欺の7割を占めた。被害総額は前年同期の約3.1億円から約69.9億円に増えた。昨年の年間の被害総額(約69.6億円)を既に超えた。 特徴は、若者や中年がだまされている点だ。子や孫を装う手口の被害者は9割が70~90代だが、警察官かたりは年代を問わない。世代別では、60代154件、50代139件、30代134件の順で多かった。20代以下も122件あった。 詐欺グループはどうやってだますのか――。 主なケースはこうだ。 全国の警察署が利用する下四桁が「0110」の電話番号や「+81」で始まる国際番号、非通知で被害者の電話を鳴らす。最近は、警察署の正規の番号を、スマートフォンや固定電話に表示させる手口もあるという。 被害者が電話に出ると、警察官を装い、「あなたが事件の容疑者になっています」「あなたの通帳が犯罪に使われています」などと言って焦らせる。その後、LINEのビデオ通話で偽の警察手帳や逮捕状を被害者に見せ、話を信じ込ませて、「口座の調査」などの名目でネットバンキングサービスで指定の金額を送金するよう求める。警察手帳や逮捕状は本物そっくりで、一般の人が偽物と見抜くのは難しいという。 警視庁は、警察官をかたる電話があれば、担当者の所属や氏名、内線番号を確認した上で、一度電話を切り、警察署に電話をかけ直すよう呼びかけている。担当者は「仮に本物の警察官からの電話だったとしても構わない。被害に遭わないためにも電話のかけ直しを徹底してほしい」と話している。 警視庁が1~4月に把握したオレオレ詐欺を含む特殊詐欺全体の被害は1496件、被害総額は約109・3億円だった。昨年同期比では、511件、約79億円多かった。(西岡矩毅) ■「警察官がたり」詐欺の被害防止策 ・固定電話は留守番サービスを利用 ・国際電話番号から固定電話への着信を受け付けないサービスを利用 ・警察官をかたる人の電話に出たら、氏名、所属、内線番号を聞き、一度切ってかけ直す ・LINEビデオ通話などで警察手帳や逮捕状を見せられたらすぐに110番通報 ※警視庁への取材による(西岡矩毅)