「人を殺したかった」元自衛官 知らない人を殺害した心理、明らかになるか 11日初公判

京都市東山区のマンションで2023年、高齢男性が刺殺された事件で、殺人と銃刀法違反の罪に問われた元陸上自衛官水島千翔(ゆきと)被告(22)=懲戒免職=の裁判員裁判が11日、京都地裁で始まる。起訴内容に争いはなく、量刑が争点となる見通し。被告は捜査段階で「人を殺したかった」と話したとされ、公判で動機や事件に至る経緯が明らかになるかが注目される。 起訴状によると、23年12月3日夜、同区本町通塩小路下ルのマンションの踊り場付近で、住人の岡田好次郎さん=当時(82)=を転倒させ、背中を踏みつけて包丁で突き刺して殺害した、としている。 府警の説明では、水島被告は事件当日、勤務先の陸自祝園分屯地(京都府精華町)から包丁を持って外出し、偶然見つけた岡田さんを刺殺したとみられる。事件後に新幹線で東京に移動し、1週間後、宿泊施設から出てきたところを逮捕された。捜査関係者によると、「誰でもよかった」「次は同世代の女性や子どもを狙うつもりだった」と供述したという。 京都地検は当時の精神状態を調べる鑑定留置を実施し、刑事責任能力を問えると判断した。弁護側は公判で起訴内容を争わず、犯行状況を踏まえた適正な量刑を求めるとしている。 関係者や陸自によると、水島被告は中学卒業後に神奈川県の陸自高等工科学校に入学。祝園分屯地では弾薬の保管や整備などの業務に就き、トラブルや処分歴はなかったという。 筑波大の原田隆之教授(犯罪心理学)は「単に『人を殺したかった』という欲求だけが犯行に至る原因とは考えにくい」と指摘する。犯罪の誘発には、本人の価値観や家族関係など複数の要因が関わっており、「被告がパーソナリティー(思考や行動の傾向)に深刻なゆがみを抱えていたことは間違いないが、弱い人をターゲットに選んでおり、社会への反感や疎外感、孤立感があった可能性もある。心のひだが鑑定結果や証人尋問などから明らかになるのでは」と話す。

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