化学機械メーカー「大川原化工機」のえん罪事件をめぐり会社の社長らが賠償を求めた裁判で、都と国が最高裁に上告しない方針を固めたことが関係者への取材で分かりました。都と国に賠償を命じた判決が確定することになります。 神奈川県横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の大川原正明社長ら3人は、軍事転用できる噴霧乾燥機を中国などに不正輸出したとして逮捕・起訴されましたが、初公判の直前に起訴が取り消されました。 無実が明らかとなった大川原社長らは東京都と国に賠償を求める訴えを起こし、東京高裁は今年5月28日、警視庁公安部と東京地検の捜査の違法性を認め、あわせておよそ1億6600万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。 東京高裁は判決で、警視庁公安部の捜査について、「再度の温度実験などの追加捜査を実施していれば、乾燥機が『輸出規制に該当しない』という証拠を得ることができた」と指摘。 また、3人を起訴した東京地検の判断についても、「合理的な根拠を欠いていた」などとしました。 最高裁への上告期限はあす(11日)まででしたが、都と国は最高裁に上告しない方針を固めていて、警視庁は、あすにも正式に発表するものとみられます。 都と国に賠償を命じた東京高裁判決が確定することになり、警視庁は今後、一連の捜査の経過を検証するものとみられます。 この事件をめぐっては、大川原社長とともに逮捕・起訴された相嶋静夫さん(当時72)が勾留中に見つかった胃がんが原因で亡くなっていて、大川原社長らはきのう(9日)、警視庁などに要望書を提出し、上告しないよう求めていました。