米カリフォルニア州ロサンゼルスで始まった移民取り締まり反対デモが、米国全域へと広がっている。今回のデモの導火線となったのは、6日の移民関税執行局(ICE)による初の大規模取り締まり。この取り締まりで父親が逮捕されたカルロス・アナスタシオさんは11日(現地時間)、ハンギョレの電話取材に応じ、「あらゆる試みが壁にぶつかっている。父は拘禁後、弁護士も接見できずにいる。明白な反憲法的状況」だと述べた。同氏は「逮捕」ではなく「拉致」だと表現した。 父親のトーマス・アナスタシオさんはこの30年間、カリフォルニアで家族を養ってきた。トーマスさんは韓国人社長が営む衣類会社に10年以上勤めており、ICEに急襲された際に13人の同僚と共に逮捕された。カルロスさんは父親からの連絡を受けて現場に駆けつけたが、できることは何もなかった。 ICEが逮捕した14人のうちの一部は、すでに追放されたという。カルロスさんは「1人は先週末に追放された。『コロナに関する文書』だとだまされて(『追放同意書』に)署名させられ、追放された」と主張した。米国の移民コミュニティーは、ICEが「手続き上、必要な文書」、「健康に関する文書」などと説明し、追放同意書に署名させる例がしばしばあると主張する。この日現在、カルロスさんの父親はまだ追放されていない。 拘禁された人々は弁護士にも会えずにいるという。カルロスさんは「多くの拘禁者が、家族との面会どころか弁護士との接見もできずにいる。ICEは何ら情報を提供してくれないので、数日間父親と連絡もつかなかった。運良く父とやっと電話できたが、非常に制限された会話だった」と話した。 カルロスさんは「なぜ弁護士を通じて拘禁された家族を助けることもできないのかを、報道機関は調査してほしい。地元の政治家が拘禁施設に入って拘禁された人が人間的に扱われているか確認しようとしたが、拒絶された。父が言うには、あそこの環境はまったく人間的ではない」と語った。そして「拘禁施設に電話してもまったく電話に出ないか、出てもすべての要請を無視する」と話した。 ホワイトハウスのミラー政策担当次席補佐官(39)は先月10日、不法滞在者の取り締まり過程における「ハビアス・コーパス(habeas corpus)の中断を積極的に検討する」と表明している。ハビアス・コーパスとはラテン語で「拘禁された者を法廷に連れて来い」を意味し、自身の拘禁が合法なのか裁判所に判断を要求する拘禁された人の憲法上の権利のこと。連邦最高裁判所は、この権利は移民、不法滞在者、亡命申請者を含む、米国内にいるすべての人に保障されることを複数回にわたって判決している。ただし米国憲法は「反乱または侵略状況において、公共の安全のために必要な場合」に限り、この権利を中断できると規定している。ミラー次席補佐官は現在、米国は不法滞在者によって「侵略」されているとして、この規定を根拠に中断は可能だと主張している。 カルロスさんはロサンゼルス市も批判した。「ロサンゼルス市警がこの作戦で共謀していることは明らかだ。拉致された家族構成員に近づけないようにしているし、移送ルートを提供して拉致が容易になるようにしている。ここは『避難所都市(移民保護都市)』として知られているが、現実はまったく異なる」。そして「バス市長や地元の政治家などの私たちを代表する選出職の公職者たちには、もっと強く訴えてもらいたい」と述べた。父親が追放されると、アナスタシオ一家は生き別れになる。カルロスさんと2人の弟妹は米国で生まれた市民権保持者だ。 ロサンゼルス/キム・ウォンチョル特派員 (お問い合わせ [email protected] )