19日朝、詐欺の疑いで逮捕された歯科医師の高橋仁一容疑者(58)。自身が院長だった千葉市の歯科医院で、2021年に患者の女性(50代)から200万円をだまし取った疑いがもたれています。狙われたのは、インプラント治療の患者たちでした。 人工の歯を装着するインプラントは、本物に近い見た目や耐久性の強さなどから注目されています。一方で治療費は数十万円ほどになることも多く、この治療の患者に対し、高橋容疑者はこんな説明をしていました。 高橋仁一 容疑者(患者に対し) 「インプラントメーカーに講演会の協力金を支払えば、治療費がメーカーから全額返済される」 高橋容疑者は十数人の患者から、少なくともあわせて1億円以上をだまし取ったとみられます。 逮捕の5か月前、私たちの取材に高橋容疑者は… 記者 「協力金と称してお金を集めたのは事実か?」 高橋仁一 容疑者 「……」 記者 「全額返すと言ってお金を借りたのは事実か?被害者が困っている。なぜ金を集めたのか?」 高橋仁一 容疑者 「閉めてください」 高橋容疑者の患者だった女性の写真。インプラントの治療中の仮歯が割れています。 高橋容疑者の元患者 「(高橋容疑者から)『大変ですよ。セラミックどころじゃなく、インプラントが必要な歯が4本あります』と言われて、頭が真っ白で」 8年前、女性は夫とともに500万円を前払いして治療を開始しましたが、治療は途中で放置されました。 さらに、“治療費の全額返還”と書かれた紙を渡され… 高橋容疑者の元患者 「ご夫妻の歯を学会で発表するモデルケースにさせてもらいたいという話をある日突然されて。(そのお礼で)インプラントメーカーが私達の治療費を全額負担してくれるっていう」 「インプラントメーカーが講演会を開催するための費用を負担してほしい」「支払った費用の倍の額がメーカーから返金される」などと持ちかけられ、女性は250万円を支払ったということです。しかし、この250万円や治療費500万円は今も返ってきていません。 高橋容疑者の元患者 「健康な歯を失って、お金を失って何だったんだろう、この期間は。健康を人質にお金をだまし取る、一番やっちゃいいけないなと」 関係者によりますと、女性のように治療費を前払いするも治療が完了しなかった人は128人に上るということです。 高橋容疑者が患者に説明をする音声が残っています。 高橋仁一 容疑者 「申し訳ございません。認めます。結果的に欺いてしまったことを」 患者 「結果的にじゃない。我々は意図的に先生の資金繰りにだまされている」 高橋仁一 容疑者 「メーカーの名前を出してお金を集めた。詐欺です」 茨城県に住む男性は、高橋容疑者から「1000万円を貸してほしい」と伝えられたといいます。 高橋容疑者の元患者 「『インプラント費用(300万円)をもらいすぎなので返しますよ』って。『その代わり、1本貸して』と言われて、1本って?と聞いたら『1000万円』と。『機材買うので助けてくれないか』と」 高橋容疑者からは「倍にして返す」と言われ、男性は3000万円を貸しましたが、およそ600万円が返ってきていません。 高橋容疑者の元患者 「謝罪の言葉が欲しい」 高橋容疑者の歯科医院は負債総額およそ18億円を抱え、去年6月に破産。関係者によりますと、高橋容疑者は2016年ごろから「有利な投資がある」などとさまざまな名目で患者から金を借り、今も返済されていない患者が57人、総額およそ8億円に上るということです。 取り調べに対し、高橋容疑者は「弁護士と話すまでは黙秘します」と供述していて、警察は全容解明を進めています。