参院選は20日投開票され、群馬選挙区(改選数1)では自民党現職の清水真人氏(50)=公明党推薦=が再選を果たした。改選数が1となった2007年以降で過去最多の7人が立候補。新興勢力の参政党が猛烈な追い上げを見せた選挙戦だったが、県連組織や業界団体に支えられた清水氏が逃げ切り、保守王国の地盤を死守した。投票率は22年の48・49%を6・63ポイント上回る55・12%。当日有権者数は157万296人だった。【参院選取材班】 高崎市日高町の事務所で当選確実の報を受けた清水氏は、小渕優子県連会長と固く握手を交わして「ご心配をおかけしました」と一言。2人の目には、ともに涙が光っていた。 薄氷の戦いだった。支援者へのあいさつに立った清水氏は「正直、私のこれまでの活動が至らず、まさに日本をつくってきた群馬県の大切な議席を失うのではないか。そんな思いもありました」と危機感を吐露。「私1人の力ではつかむことのできなかった勝利」と振り返り、「選挙戦を通じてお約束をした一つ一つの事柄を丁寧に国に届けてまいりたい。いただいた票に恥じぬような活動をしてまいりたい」と2期目への決意を述べた。 県連組織や業界団体に支えられて臨んだ選挙戦。ところが、公示2週間前に県議の1人が逮捕され、逆風に見舞われた。記者団の取材に応じた清水氏は参政の猛追について「ネットを駆使した新しい選挙」「まさに後ろに影が迫っていると強く感じた」と語った。 小渕県連会長は「この勝利に甘えることなく、おごることなく、我々は県民の皆さま、国民の皆さまの声に応えているのか、しっかりと考えながら、謙虚に誠実に進んでまいります」とあいさつした。 ◇青木氏 新しい政治の一歩 現職に猛追した参政党の青木ひとみ氏(44)。前橋市大友町の事務所で開票を見守り、敗戦が確実になると、悔しさをにじませた。 選挙戦を振り返り「参政党という存在を多くの有権者に知っていただき、思いに共感を示してもらった」とあいさつ。「自民党の組織を崩せなかった。残念ではあるが、予想よりも票をいただき、新しい政治の第一歩を踏み出せた」と語った。 昨年12月にいち早く出馬表明。当初は3年前の参院選で参政候補が得た4万票の3倍にあたる12万票以上の獲得を目標に掲げていた。その勢いは予想を上回り、非自民の受け皿を求めた保守層や無党派層にも食い込んだ。 知名度を高めるため、街頭演説や交流サイト(SNS)を通じての発信を重視。「政策を評価していただき、SNSを通じて共感をいただいた」と総括した。 ◇河村氏 「思い」届かず 立憲民主党の河村正剛氏(52)は全国の児童養護施設などに寄付を広げた「タイガーマスク運動」の創始者としてアピールし、この日も虎柄のネクタイを着用して高崎市小八木町の事務所に登場。敗色が濃厚になり、「各地で思いを訴えてきたが届かなかった。私の力不足の一言に尽きる」と頭を下げた。 3年前の参院選では連合群馬の組織内候補が立憲と国民民主党に推されて、13万票を獲得。河村氏も連合群馬の推薦を受けたが、国民は比例代表の候補がいるため支援の一本化が難しいと推薦を見送り、実質的な自主投票だった。 ◇高橋氏 「中間政党に票」 前橋市古市町の共産党県委員会を事務所とした高橋保氏(67)。落選の見込みが伝えられると、支援者の前でマイクを握り「アメリカの言いなり、財界本位の政策を変えようと一貫して主張してきた」と語りかけた。 選挙戦については「ネットの情報や居酒屋談議のような主張をする中間的な政党に票が行ってしまった」と評価。「自民は『勝った』と言えないような勝ち方で、復調はないだろう」とも述べた。 3年前の参院選、昨年の衆院選に続き、3回目となった国政挑戦。だが、新たな支持層への浸透は難しかった。