未解決だった20年もの間、墓前を訪れ続けた恩師と友人「真実は何か。少しでも知りたい」 24年前の広島県福山市の主婦殺害事件、24日から控訴審

2001年2月、広島県福山市の民家で主婦=当時(35)=が刺殺された事件で、殺人と住居侵入の罪に問われた被告(71)=同市=の控訴審が、24日に広島高裁で始まる。事件発生から24年余り。市内に住む主婦の高校時代の恩師と友人の2人が中国新聞の取材に初めて応じ、「何年たっても、大事な人を失った悲しみは消えない」と胸中を語った。 高校の国語教員だった女性(68)は、事件を報じるニュースに教え子の名前を見つけたあの日を、今も鮮明に覚えているという。「子育てもしながら働いて。幸せに生きていたはずなのに…」。卒業後も家族ぐるみの付き合いが続いた。思い出すたびに、涙があふれる。 「明るくて前向きで、頼ってばかりいた。悩む時は今でも彼女を思い浮かべる」。そう振り返るのは、小中高を共に過ごした友人の女性(59)だ。高校時代は同じ店でアルバイトをし、通学も一緒。「双子みたい」とよく言われ、互いに結婚後も子育ての合間に近況を報告し合っていた。 最後に会ったのは事件の数カ月前。「私があの日、彼女の家に遊びに行っていれば事件は起こらなかったんじゃないか」と今も後悔に駆られる。 事件は20年もの間、未解決だった。恩師と友人の2人は命日に合わせて、墓前に線香と花を手向け続けた。「彼女の無念を晴らしたい」という一心で、祈りをささげてきた。 今年2月、広島地裁は被告に懲役15年の判決を言い渡した。しかし公判で被告は事件への関与を否定し、真相は闇のまま。「真実は何か。少しでも知りたい」―。2人と遺族の共通の願いだという。 一審判決後に2人は主婦の実家を24年ぶりに訪ね、遺影に向き合った。友人は「生きていれば今年で還暦。本当なら旅行に行ってお酒を飲んで、笑い合って…。でも写真の彼女は、ずっと若いまま」。目を赤くして寂しそうにつぶやいた。 恩師は事件の風化を危惧する。今の若者の多くがこの事件を知らないという。「理由もなく大切な人を突然奪われる悲しみは、いつ誰の身に降りかかるか分からない。人ごとと考えないで。事件があったことを忘れないで」 ◇ 福山市主婦刺殺事件 2001年2月6日午後1時ごろ、福山市の民家で住人の主婦が口に粘着テープを貼られ、左脇腹にナイフが刺さった状態で失血死しているのが見つかった。21年10月、広島県警は男を殺人容疑で逮捕し、翌11月に広島地検が殺人と住居侵入の罪で起訴した。広島地裁の裁判員裁判で被告は起訴内容を否認して無罪を主張したが、地裁は今年2月の判決で、求刑通り事件当時の有期刑上限である懲役15年を言い渡した。

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