「痴漢されています」チャットボットのSOS 阪急電車オペレーターが機転 駅員が確保

夏場に増加傾向にある痴漢被害。被害に遭っても声を上げられず「泣き寝入り」する被害者も多いとみられ、警察の防犯アプリなど周囲に助けを要請できる仕組みづくりが進む。阪急電鉄ではチャットボットサービスで痴漢被害を訴えた女性からのSOSにオペレーターがすばやく反応。駅員と連携して容疑者逮捕に貢献し、京都府警から表彰された。 同社交通案内オペレーターの川本愛理さん(51)と、長岡天神駅の駅員の延命寺誠さん(46)。 5月28日のこと。阪急京都線大阪梅田行きの車内で、男(69)が被害女性(31)の隣に座り、胸付近に断続的に左肘を当て続けるという痴漢事件が発生した。声を上げられない女性が頼ったのが阪急のチャットボットだ。 《痴漢被害に遭っている》。女性は被害状況を書き込んだ。 阪急によると、チャットボットは運行状況などの問い合わせ対応のために令和3年から本格導入された。女性の書き込みがオペレーターとのやり取りを求める内容だったため、ここで川本さんが動いた。 当初はいたずらも疑った。しかし女性の訴えには切迫感があり、被害は実際に起きていると判断。女性を安心させるような文面を心がけながら、乗車位置やその場から逃げることができないかなどを尋ねた。 女性が《逃げることができない》と伝えたため、川本さんは長岡天神駅の駅員に連絡。停車した車内で阪急側が確認したところ、女性が名乗り出たという。駅員に促され、ホームに出てきた男は線路上を走って逃走を試みたが、駆け付けた延命寺さんが身柄を取り押さえた。その後、向日町署が京都府迷惑行為等防止条例違反の疑いで現行犯逮捕した。 京都府警向日町署は23日、2人に感謝状を贈呈した。贈呈式で川本さんは「お客さまを安心させられるよう心がけた」と振り返り、容疑者の逮捕後、女性からチャットで改めて感謝の言葉が届いたと明かした。 川本さんは「お客さまを直接助ける機会は少ない。今後とも陰ながら助けていきたい」と話し、「現場で痴漢を捕まえた人だけが感謝状を頂くものだと思っていた。私まで頂けると聞いて驚いた」と語った。 同署の入澤今日子署長は「こうした対応は想定外だったとは思う。今後とも活躍してほしい」と感謝の言葉を述べた。

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