岡山県の古民家に保険金目的で放火したとして火災保険の調査に長年携わっていた保険調査員らが逮捕・起訴された事件に絡み、損害保険大手「東京海上日動火災保険」(東京都)が、この調査員に委託していた過去の多数の保険調査について、再調査を行う方針を固めたことが26日、同社への取材で分かった。調査員らは新たに青森でも放火の疑いで逮捕。事件の影響はさらに広がる可能性がある。 調査員は、東京都調布市の深町優将(まさのぶ)被告(53)。関係者によると、深町被告は保険各社が出資する調査会社最大手「損害保険リサーチ」(東京)に令和5年春頃まで調査員として在籍。火災保険の調査を主に担い、「業界のエース」と呼ぶ声もあった。独立後も、大手損保などから引き続き調査業務の委託を受けていたという。 しかし川崎市の無職、稲葉寛被告(57)らと共謀し5年10月、岡山県美咲町の古民家に放火して火災共済金を詐取しようとしたとして、今年4~5月に岡山県警に逮捕され、今月4日に2人は非現住建造物等放火と詐欺未遂の罪で起訴された。被告らは65万円で購入した古民家の建物などに総額4900万円を受け000800取れる共済をかけていた。 ■業界先駆け調査へ 東京海上日動「毅然と対応」 事件発覚後、損保各社は状況確認に追われていたとみられるが、現状は静観の構えだ。ただ東京海上日動は他社に先駆けて、損保リサーチ在籍時を含め、深町被告が担当した調査の報告書を洗い直すことを決めた。東京海上日動によると「対象の調査は膨大で相当な時間を要する」としている。 旧ビッグモーターによる不正請求問題などで近年、保険業界は逆風にさらされており、東京海上日動の担当者は「保険制度は契約者からの保険料で成り立っており、不正請求を許せば公平性が崩れる。毅然(きぜん)と対応したい」と話す。 一方、捜査関係者によると、稲葉被告と深町被告はメンバーを入れ替えながら、保険金目的の放火を全国で少なくとも数件繰り返した疑いがあり、深町被告が損保リサーチ在籍当時の火災も含まれるとされる。 青森県警は25日、5年11月に青森県つがる市の古民家に放火したとする非現住建造物等放火の疑いで、両被告や古民家の所有者ら4人を逮捕。古民家は4年4月に購入されていた。県警は保険金目的の放火を視野に捜査している。