「グレーだと思った」…捕まった誰もがオンラインカジノが違法だと知らなかったと口を揃える〝背景〟

6月23日に『ぽかぽか』のプロデューサーであるフジテレビの鈴木善貴容疑者(44)が警視庁に常習賭博の容疑で逮捕され、24日には山本賢太アナウンサー(27)が単純賭博の容疑で書類送検された。今年に入り、著名人たちによるオンラインカジノ(以下、オンカジ)利用の話題が絶えない。これまでに吉本興業の芸人が6人書類送検され、プロ野球界でも、オリックスの山岡泰輔や巨人のオコエ瑠偉、増田大輝らが書類送検されている。 オンカジを巡る逮捕者は増加している。警視庁が公表した『オンライン上で行われる賭博事犯の取締り状況』によれば、’24年に279人が検挙されている。’22年は59人、’23年は107人となっており、取り締まり件数が一昨年の4倍以上に増加していることがわかる。 これだけ多くの人が摘発される以前は、オンカジはグレーゾーンだと言う人が少なくなかった。違法性については、前述のオコエ、増田選手らも、「グレーだと思っていた」「違法だとは思っていなかった」と話していたようだ。しかし本当に『グレー』であるなら、逮捕者が出ることはない。多くの人は「オンカジは違法性が低い」などの謳い文句を真に受けて利用しているようだ。オンカジが日本で流行るまでの経緯と背景について探った。 ◆グレーゾーンはどこにも存在しない 結論から先に言うと、オンカジはグレーではなく、違法だ。’24年に警察政策学会が公表している『オンラインカジノをめぐる法的諸問題』によると「日本国内において明確な違法行為である」との記載があり、刑法185条・単純賭博罪、第186条1項・常習賭博罪、同条2項・賭博場開帳等図利罪の罪に問われるとなっている。 グレーゾーンだと言う人たちの根拠は「賭博罪も賭博開帳図利罪も国内で行ったときに成立するので、国外のオンラインカジノサイトにアクセスして賭博を行っても、国内の罪に問われない」、「賭博罪は賭けをした相手も罪に問えなければ成立しない『必要的共犯』なので、相手の国で合法であれば罪に問われない」との理由からだ。しかし、どのような形態であっても、日本国内でのオンラインカジノ利用は完全なブラックであり、「グレーゾーン」はどこにも存在していない。 オンラインカジノは’12年ごろには日本語対応のサイトがすでにあり、少なくともそれ以前から利用者はいたと考えられている。その後、オンラインカジノのアフィリエイトが登場し、当時のアフィリエイトブロガーたちはこぞって紹介していた。アフィリエイトサイトから入会した人が、カジノで遊び続ける限り、掛け金の一部が常に報酬として支払われ続けるという報酬形態が多くあった。そのためアフィリエイト商材として人気を博し、オンラインカジノを専門に扱うサイトまであった。 ◆最近まで「グレー」説が普通だった理由 大きな転換点となったのは、世界中が新型コロナウイルスの脅威に晒されていた時期だ。オンラインカジノを運営している企業が、著名人やインフルエンサーを広告塔として起用し、集客をしたのだ。 元大関の把瑠都、元プロサッカー選手の吉田麻也、元セクシー女優の上原亜衣といった業界の著名人を用いて宣伝を行った。海外ではカジノサイトの宣伝に有名人を使うのは一般的だったので、著名人たちも安易に引き受けたのだろう。「この人が宣伝をしているなら大丈夫」という気持ちが利用者たちの危機感が薄れさせたのは想像に難くない。 また、複数のテレビ局やラジオ局では、海外のオンカジサイトの「無料版」のCMを流していたことも、「グレー」のイメージが定着していた理由だろう。オンカジ側も集客のために、入金した金額に対してのキャッシュバックや、掛け金として使えるポイントを付与するなどの積極的なサービスを行って利用者にアピールした。利用者数は一気に増えた。’21年には月間アクセスが1000万を超える大手サイトが複数出現し、日本からのアクセス数は世界第3位となっている。 オンカジがすっかり普及して、ギャンブル依存症になる人や、借金苦で闇バイトに手を染める人が出るなど深刻な社会問題化するまで、摘発例は少なかった。そのことも「グレー」説の強力な後押しになったといわれている。実は政府は’13年にオンカジについて「一般論としては、賭博行為の一部が日本国内において行われた場合、賭博罪が成立することがある」という公式見解を出していたが、対応は完全に後手に回ってしまった。警察が消費者庁と共同で「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!」とする認知普及キャンペーンを初めて行ったのは’22年のことだった。 ◆いつでもどこでもできるから止められない 過去にオンカジを利用していたという20代男性は、パチスロや他のギャンブルと違い、毎日好きな時間に賭博ができることに魅力を感じていたと話す。 「平日は仕事で賭けができません。競馬や競艇もありますが、隙間時間にできるかといわれると、馬券や舟券を買う時間が限られているので難しい。ワンゲームから手頃に行えるオンラインカジノであれば、電車内や昼休みの空いた時間にポーカーなどができます。 それに、小額からお金を稼げると考えれば夢があります。普通に遊ぶだけでも楽しいのに、運が良ければ一生遊んで暮らせるような大金を稼げる可能性だってある。寝る間も惜しんで夢中でポーカーをしていた時期がありました」 この男性の場合は、クレジットカードで場所や時間を問わずに入金ができることも、オンラインカジノ依存に拍車をかけたようだ。「ポイントがなくなってしまっても、すぐに補充できてしまうので、『もう一回、もう一回だけ』と続けていくうちに止められなくなるんです。おかげでいくら使ったかわかりません」と、現在ではハマったことを後悔しているようだ。 オンラインカジノはスマホがあればゲーム感覚で手軽に賭博ができる。通常のギャンブルと比べると1回の勝負のスピード感が速く、24時間寝ずに続けることもできるために、ギャンブル依存症になったり、あっという間に「一生遊んで暮らす」どころか「一生かかっても払いきれない」ような借金を背負う羽目になる可能性もあるのだ。 取材・文:白紙緑

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