17歳のときに路上強盗で少年院に収容「なんであんなことを…変わっていかなきゃ」元“犯罪少年”が札幌で開いた駄菓子Bar…子どもと大人をつなぐ居場所作り

犯罪から更生する姿を追うシリーズ『罪と償い』(4回目)。強盗傷害の非行で、少年院に収容された元犯罪少年らが『駄菓子BAR』という、ちょっと変わった店を開いています。 ◆《子どもたちが集う“駄菓子Bar”…店に込めた思い》 札幌・白石区菊水の住宅街に、放課後、子どもたちが集まってくる店があります。 口に入れるとパチパチと弾ける『パチパチパニック』もあれば、『わさびのり』に『にんじん』『タラタラしてんじゃねーよ』など…。店の中には懐かしさを感じる駄菓子がたくさん並んでいます。 三男 松田義輝さん:「80円…、あ、ごめん100円だわ」 店を訪ねた子ども:「ほら!オレ頭いい!」 三男 松田義輝さん:「お前、頭いいな!」 会計が済むと、子どもたちは駄菓子を手に、店の奥あるカウンターへ移動。テーブルのコーラは、店のサービスです。 店を訪ねた子ども:「この駄菓子が、コーラに合うんですよ」 (Q.おいしい?) 店を訪ねた子ども:「うん」 まるで、一日の憂さを晴らすかのような子どもたちの姿。大人も顔負けです。そんな子どもたちが集う駄菓子店を切り盛りするのは、27歳の松田裕輝さんと、その弟たちです。 札幌・白石区菊水にある店の名前は『ネイムレス』。駄菓子店を兼ねたBarという、ちょっと変わった店です。 松田裕輝さん(27): 「この辺が、母子家庭や父子家庭が多い地区ということがあって…、治安が悪いとみられがちな菊水を、子どもと大人がコミュニティを図れる場として、昼は駄菓子屋さん、夜はBARという形でやっています」 ◆《17歳のときに路上強盗「なんであんなことを…」》 松田裕輝さんは、少年法でいう元“犯罪少年”です。かつて松田さんが起こした路上強盗の現場で、こう事件を振り返ります。 松田裕輝さん(27): 「あの辺ですね…あの辺。うーん、なんであんなことをやってしまったのか…というのはあります。被害者の方に申し訳ない気持ち…、申し訳ないで済むような話ではなかったんですけれど」 【事件を伝える当時のニュース】 <「きょう未明、札幌市東区の路上で、帰宅途中の50歳の男性が少年とみられる5、6人の男に襲われ、現金を奪われました」> 今から10年前、17歳だった松田さんは、仲間3人と通行人の男性を襲い、5000円ほどを奪って逃走。被害者は、ろっ骨を折る大けがをしました。そして事件の半年後、松田さんは逮捕されます。 松田裕輝さん(27): 「捕まった時は、人生終わったと思いましたね。その時は、被害者のことを考えるよりかは、“自分がこれからどうなるんだろう…”ということしか、頭になかったです」 1年あまりの少年院の生活。社会に戻った後も、すぐには立ち直れませんでした。 松田裕輝さん(27): 「少年院から出てきた後、もまともな人間ではなかったんですけれど…。当時、目の前に覚せい剤とかがあったら、恐らくやっていたんじゃないかなって…」 ◆《“寂しい子どもたちを減らしたい”という願い―》 松田裕輝さんは5人兄弟の二男。両親の離婚で、母子家庭で育ち、いつもお腹を空かせていたといいます。 松田裕輝さん(27): 「小さい頃、お金が無かったので、おやつを食べることができなかったんです。それで梅干しとか海苔とか、味噌とか紅ショウガとか…冷蔵庫にあるものをひたすら、漁って食べていました」 松田さんの駄菓子店には、独自のシステムがあります。拾った“松ぼっくり”を5つ持ってくると“1ぼっくり紙幣”と交換。そして、“1ぼっくり”で、駄菓子1つと交換できるのです。 “お金がなくても、子どもたちは楽しめる―”。そんな松田さんの思いが込められています。 松田裕輝さん(27): 「目標は寂しい子どもたちを減らしていこう、いいコミュニケーションを取れるお兄さんたちでいられたらいいな…と思っています」 駄菓子店兼Barを営む松田さんの本業は、内装業です。仕事に始めるきっかけは、2024年に亡くなった父の姿でした。 松田裕輝さん(27): 「父親が内装屋さんをやっていて、14歳、15歳のときに手伝いをしていたんですよ。カッコいいと思って、建築系の高校に入学したんですけれど…」 松田さんのもとで働く人の中には、高校を中退した若者もいます。 松田裕輝さん(27): 「これをスポっとハメる。隙間が空いてんじゃん…これでOK」 従業員(16): 「(高校を中退した後)自分で仕事を探そうと思ったんですけれど、パッと来る職がなくて…その時に紹介してもらって」 ◆《「自分がもっと変わっていなきゃ…」生き方を大きく変えた事件》 この日、松田さんが訪ねた先は、駄菓子の問屋。月に一度の仕入れです。 松田裕輝さん(27): 「焼き肉、かば焼き…子供が意外と甘いものではなくて、しょっぱいものが好き。“酒飲み”みたいな…」 今回の仕入れは約4万円分。駄菓子店の経営は、松田さんのほぼ持ち出しです。子どもの居場所を作る意義について、少年非行など、犯罪社会学の研究者は、話し相手の選択肢が増える大切さを、こう話します。 摂南大学犯罪社会学 竹中祐二准教授: 「子どもにとって、親や学校や友だちではない…そうじゃない繋がり、選択肢、話し相手が増えるということが、まず望ましい。時には、ご自身の経験がフック(きっかけ)になって、時には駄菓子屋Barとしての立場がフックになって、子どもがこの人の話なら、聞いてもいいかなって思える存在になっているところがポイント」 実は、松田さんの人生に、大きな影響を与えた事件があります。高校時代に知り合った女性が、2歳の娘に十分な食事を与えず、衰弱死させたのです。 松田裕輝さん(27): 「あの時、ああいう風に関わっていた人が、まさかこんなことになるなんて…と思ったんですよね」 「このままだと自分が死ぬか、他人を殺すかもしれないと思った時期はありましたね。自分がもっと変わっていかなきゃと思いましたし、誰かのお手本になったり、誰かを助けになったりするような人間になりたいな…と」 松田裕輝さんと弟たちが営む駄菓子Bar『ネイムレス』に、この日も、子どもたちが連れ立ってやって来ました。 店を訪れた子ども:「こんにちは!」 孤独や孤立の予防線は、人とのつながり―。遠回りしてきたからこそ、松田さんは、その大切さを誰よりも知っています。 ◆《過去に起こした犯罪と向き合い、反省を未来へ活かす―》 森田絹子キャスター) 取材した摂南大学の竹中准教授によりますと、犯罪社会学には“学習理論”という考え方があります。「人の行動は、暴力が当たり前の環境で育てば、非行や犯罪に走ってしまうことがある一方、誰かが良いお手本となることで、良い行動を学び直すことができる」という考えです。 堀啓知キャスター) 松田さんは、自身の経験から駄菓子Barを通じて子どもに寄り添おうとしています。 子ども食堂という存在も、とても注目されていますが、そうした気兼ねなく、子どもたちが立ち寄れる場所は、現代では、とても求められているんだろうと思います。 過去の犯罪としっかり向き合って、その反省を未来へ活かそうと、松田さんはいま、その途中に立っているんじゃないでしょうか。 今後、松田さんは“巨大迷路”を作る夢があって、壁にぶつかっても、諦めずに進めば、道が見つかることを伝えたいと話しているとのことです。

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