ポケモンカードの希少性を熟知、陰に同業者 岐阜・笠松町のトレカ店強盗、店長が事件振り返る

◆1枚最高200万円 被害1370万円相当 店を襲ったのは、付き合いのある近隣のカードショップ関係者や顔見知りだった-。岐阜県羽島郡笠松町のトレーディングカードショップで6月、1370万円相当のポケモンカードなどが奪われた強盗事件で、被害店舗の女性店長(32)が本紙の取材に応じた。逮捕された男3人のうち2人は店と関わりがあり、計画的に閉店後を狙って店内に押し入っていた。「まさかうちの店をターゲットにするとは思わなかった」と憤る。 6月13日の夜。閉店時間の午後10時を過ぎても4人の常連客が残っていた。店の男性オーナー(25)と一緒に話が盛り上がり、気づくと午前3時を回っていた。4人が店を後にすると、姿を見せたのが店によく来る顔見知りの会社員坂口直人被告(36)=本巣市、強盗と建造物侵入の罪で起訴=だった。「勝手に店に入ってきた。こんな時間になぜ」と不思議に思った。 10分ほど後、ナイフを持った運送業安藤奎司被告(34)=関市、同=が押し入り、カードや現金を要求。高額カードをあさって約30分居座った。後に分かったが、先に訪れていた坂口被告は車を運転し、逃走を手助けする「人質役」。店長とオーナーは、手足をガムテープで縛られた上、スマートフォンを奪われ、車で岐阜羽島署に行くしかなかった。店長は「ナイフを持った男(安藤被告)は見たことがなかった。客が人質になるなど後から考えるとおかしな点があったが、あの瞬間は客が犯人とは思わなかった」と振り返る。 事件から5日後、両被告が逮捕された。今月9日には、現場にはいなかったが強盗に関与したとして、岐阜市内でカード類を販売する渡辺祐次容疑者(35)=関市=が逮捕された。3人はカードゲーム仲間で、捜査関係者によると、いずれも金に困って犯行に及んだとみられる。同じ業界の人物として、カードの希少価値や価格相場に詳しい。店長は「よく知るカードショップ関係者が関わっていたなんて」と困惑した。 被害総額は予想以上だった。「最高額は200万円。100万円クラスのポケモンカードも持っていかれた。300〜1千円のカードも大量にあったが、すべて特定することもできずに諦めた」と声を落とす。20日間近く休業したことも痛手になった。 店内には防犯カメラを設置するなど対策を取ってきたが、未明まで店を開けていたことは反省しかないと感じる。盗まれたカードは見つかっておらず、なぜ狙われたのかも分かっていない。店長は「モヤモヤが残ったまま。事件の全容を知りたい」と願いを話す。 事件は6月14日未明に発生。売上金54万円とポケモンカードなど123点(1370万円相当)が奪われた。 【カードゲーム・トレーディングカード市場規模】 日本玩具協会によると、2024年度は前年比9・0%増の3024億円で、19年度から約2・6倍と市場拡大が続く。90〜00年代に遊んでいた世代が大人になり、再び収集するようになったことに加え、コロナ禍の巣ごもり需要の拡大も追い風になった。転売目的の買い占めもある。中古市場も活発で、カードショップが急増し、カードの流通量や人気度、状態により高額取引されるものもある。また投機的な取引もあり、価格が激しく乱高下する一因にもなっている。

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