原発「空」の防衛に限界 法規制も「強制力」なし 玄海原発〝ドローン〟侵入

佐賀県の九州電力玄海原発上空にドローンとみられる光る物体が侵入した。物体は飛び去り、操縦者や意図などは不明だが、テロ攻撃や偵察の意図があった可能性も捨てきれない。テロの標的になりかねない原発は陸海空で厳重な警備が敷かれ、原発と周辺地域上空のドローンの飛行は法律で原則禁止されている。ただ、「強制力」はなく、侵入を事前に防ぐことは難しいため、対応には限界があるのが現状だ。 原発や関連施設に対する警察や海上保安庁の警備は、2001(平成13)年に起きた米中枢同時多発テロを契機に本格化し、23年の東日本大震災以降、さらなる強化が進められてきた。 警察当局は全国のすべての原発に「原発特別警備部隊」を配置し、24時間態勢で警備に当たる。爆発物やNBC(核、生物、化学)テロなど、あらゆる事態を想定し、サブマシンガンやライフル銃、防護服などを装備する。 沿岸部に立地せざるをえない原発には洋上テロに対する懸念もあり、海上保安庁も警備を重視。武器搭載の巡視船艇を配備するなどしている。 さらに、空からの攻撃にも備え、原発と周辺地域の上空でドローンなどを飛行させることは、安全性に関わるため法律で原則として禁止されている。無登録のドローンを飛ばすことも法に抵触し、令和5年には北海道電力泊原発(北海道泊村)の敷地から50メートルの海岸で国に登録していないカメラ付きドローンを飛ばしたとして、男が逮捕された。 警察庁の露木康浩前長官は昨年9月に東京電力福島第1原発の警備の状況を視察した際、「ドローン対処も含めて訓練の高度化などを進めていきたい」と述べ、原発を巡るドローン対策は重要視されてきた。 その背景には、ロシアによるウクライナ侵略で原発を標的とした攻撃が続いていることもあるとみられる。ウクライナのゼレンスキー大統領は今年2月、1986年に爆発事故を起こしたウクライナ北部のチョルノービリ原発が、ロシア軍のドローン攻撃を受けたと表明。国際人道法(戦時国際法)では原発を攻撃してはならないと定められているが、狙われる脅威は現実のものとなった。 原発周辺の地上警備は厳重な一方で、空からの侵入を事前に防ぐことが難しい現状もある。今回の飛行物の意図などは分かっておらず、関係者は「真相の解明が必要だ」としている。(宮野佳幸)

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