裁判所の強制執行悪用疑いの詐欺事件 凍結口座保有の法人に接触か

裁判所にうその債権を申し立て、銀行の凍結口座から現金を引き出したなどとして、警視庁は、東京都渋谷区のコンサルティング会社「スタッシュキャッシュ」の実質的経営者、林竹千代容疑者(61)=横浜市=ら男3人を詐欺などの疑いで逮捕し、28日に発表した。認否を明らかにしていない。 犯罪収益対策課によると、3人の逮捕容疑は昨年8月、うその公正証書を東京地裁に提出し、強制的に財産を回収する「強制執行」の手続きによって、都内の法人名義の凍結口座からスタッシュ社に約610万円を振り込ませたなどというもの。 林容疑者らは法人名義の凍結口座を見つけると、法人側に接触。犯行グループの一人が法人の代表に就任し、凍結口座を入手した上で、スタッシュ社に債務があるとうそをついて公証役場で公正証書を作成させていた。それをスタッシュ社が裁判所に提出し、凍結口座から金を得ていたという。 ■凍結口座から4億円超得たか 捜査関係者によると、これまでに複数の凍結口座からスタッシュ社に振り込まれた現金は計4億円超に上るという。(三井新) うその公正証書による強制執行手続きを悪用したとされる事例を受け、今年2月に最高裁は全国の裁判所に注意を呼びかけた。警視庁によると、今回の事件で現金が不正に引き出された疑いがある口座は、詐欺事件の被害金が含まれているとして「凍結」されていたといい、その金は被害者の救済に充てられるはずだったという。事件を防ぐ手立てはなかったのか。 ■「双方がうそをつけば・・・」 裁判所が強制執行手続きをとる上で、根拠になりうるのが公正証書だ。作成する際は、公証人が当事者に確認し借用書なども参照する。ただ、口座の明細などの確認まではしないといい、日本公証人連合会は「債権者と債務者の双方がうそをついた場合、不正を見抜くのは難しいケースもある」とする。

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