出前館配達員〝名義貸しビジネス〟の全貌 1400人の就労資格のない外国人が働くまで

「配達員のアカウント登録をしたい。名義を貸してくれる日本人はいないか?」。就労資格のない外国人を食事宅配サービス「出前館」の配達員として働かせていた男が、警視庁に摘発された。外国人の知人から寄せられたこんな相談をきっかけに、名義貸しする日本人と外国人をマッチングするスキームを確立していたという。配達員登録の手軽さを悪用し、巨額の利益を得ていた犯罪の全貌とは-。 ■「配達仲間」の相談 男は、東京都中野区の会社役員、山崎光太郎被告(51)=詐欺罪で公判中。7月に東京地裁で開かれた初公判では、被告が構築したという「不正就労システム」が明らかにされた。 山崎被告は平成28年ごろから、出前館とは別の食事宅配サービスで配達員として働いていた。そんな中、飲食店の前で配達待ちをしている際に知り合ったのが、同じく配達員のウズベキスタン籍、パルダエフ・マンスルジョン・エガムナザロヴィッチ被告(29)=詐欺罪で起訴=だった。 パルダエフ被告は「出前館の配達員として働きたいが、就労資格のないウズベキスタン人の知人がいる。配達員のアカウント登録をするための名義を貸してもらえないか」と相談を持ち掛け、山崎被告は出前館のアカウントを作成。月2万円で貸した。 しばらくして、今度はパルダエフ被告自身が「自分がいる会社が出前館と金銭トラブルになり、(配達員として)働けなくなった。また名義を貸してもらえないか」と依頼してきた。「仲介手数料をとればもうかるのでは」。山崎被告は〝商機〟を見いだした。 折からの新型コロナウイルス禍で、フードデリバリーサービスは成長を続けていた。就労希望の第三者向けに名義貸しをする日本人を募集してみると、案の定、多くの応募があった。こうして令和4年ごろには、〝名義貸しビジネス〟が確立されていった。 ■SNSで仲介 山崎被告をトップとするビジネスモデルはこうだ。 元々、山崎被告に誘われて名義貸しをしていた日本人約10人が仲介役となり、LINE(ライン)のオープンチャットで、《出前館案件》《副業紹介》といったグループを作成。出前館の配達員アカウントを作成する日本人を募っていた。 一方で、外国籍の仲介役が、SNSなどで留学生ら就労資格のない外国人を募集。仲介役らを含めたLINEグループを作成し、両者をマッチングさせていた。

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