2024年(令6)11月に出演者兼プロデューサーが傷害事件で起訴され、同12月に予定していた全国公開を延期していた映画「火の華」(小島央大監督)が、10月31日から東京・ユーロスペースほか全国順次公開することが決定した。製作・配給元のアニモプロデュースが7日、発表した。 「火の華」をめぐっては、24年11月26日に一部週刊誌が、出演者兼プロデューサーが同9月に都内の飲食店で暴行事件を起こし、傷害容疑で逮捕されたと報道。報道前の同14日には東京・渋谷のユーロライブで完成披露試写会を行い、小島央大監督と共同企画・脚本にも名を連ねる主演の山本一賢(39)が登壇し、トークイベントも開催していたが、報道を受けて、同29日にアニモプロデュースが公開延期を発表。「本作の出演者兼プロデューサーを務めた人物が起訴されたという事実を受け、関係各所との協議の結果、映画『火の華』の12月13日(金)新潟先行公開および12月20日(金)全国公開を取りやめ、延期する決定をいたしました」との文書を公表していた。 アニモプロデュースは、公開決定にあたり声明を発表した。その中で「昨年11月に出演者兼プロデューサーが傷害事件によって起訴されたことを受け、弊社は12月に予定していた全国公開を延期することを決定し、これまで代理人を通じて、裁判の経緯を注視してまいりました」と公開延期までの経緯を説明。その上で「今年4月には、当該事案に関する執行猶予付き判決が確定し、刑事事件が終了したという報告がありました」と、公開延期を余儀なくされた出演者兼プロデューサーの事件が、1つの区切りを迎えたことを明らかにした。 そして「公開については様々なご意見があるかと存じますが、本作は監督やキャスト・スタッフをはじめとする大勢の関係者が携わって出来上がった映画であり、また、当該事案が映画とは一切関係のない場所で発生したものであることから、『個人の問題が作品そのものの責任に直結するものではない』という観点に基づき、製作会社・配給会社の責任かつ使命として劇場公開の決断に至りました」と公開決定の判断を下した理由を説明した。 その上で「なお、本作はすでに完成された作品であることから、本編の再編集は行わず、オリジナルのまま上映させて頂きますことをご承知いただけますと幸いです」とした。 同作には、主演の山本のほか、柳ゆり菜(31)松角洋平(48)ダンカン(66)伊武雅刀(76)らが出演。傷害事件を起こした出演者兼プロデューサーの名も、クレジットにはそのまま記載されている。 アニモプロデュースは「最後になりますが、昨年の公開延期発表の時から今まで応援の声を様々な形で届けてくださった皆様に心より感謝申し上げます」とした。 「火の華」は、16年に陸上自衛隊が派遣された南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)において、現地で大規模戦闘が発生し、防衛省が「廃棄した」としながら発見された部隊の日報には「戦闘」の記述があり、問題となった自衛隊日報問題が題材。元自衛官の壮絶な経験とその後の宿命を克明に描いた完全オリジナルストーリーで、日本伝統の花火をモチーフに、戦うことや平和の在り方、人間の本質までを問いかける作品。29日に開幕する、第21回大阪アジアン映画祭のインディ・フォーラム部門への正式出品が決まっている。 ◆「火の華」 2016年、PKO(国連平和維持活動)のため南スーダンに派遣された自衛官の島田東介(山本一賢)だったが、ある日、部隊が現地傭兵との銃撃戦に巻き込まれる。同期で親友の古川は凶弾に倒れ、島田はやむなく少年兵を射殺。退却の混乱の最中、隊長の伊藤が行方不明となってしまう、前代未聞の“戦闘”は、政府によって隠蔽(いんぺい)されてしまう。それから2年後。悪夢に悩まされる島田は新潟で、闇の武器ビジネスに加わりながら花火工場の仕事に就く。親方の藤井与一や仲間の職人たち、与一の娘昭子に支えられ、心に負った傷を少しずつ癒やしていく島田は、花火師の道に一筋の光を見いだしていく中で、過去の闇が迫る。