特殊詐欺の被害に遭いそうになった高齢女性を助けたとして、看護師の池田沙椰さん(27)=兵庫県相生市=に県警相生署が今月、署長感謝状を贈った。詐欺被害を防ぐことができたのは、ATMコーナーで聞こえてきた「威圧するような男の声」に気づいたからだった。 池田さんは7月1日午後6時半ごろ、仕事終わりに市内の金融機関のATMコーナーに立ち寄った。すると、隣にあるATMの前で、60代の高齢女性が携帯電話を手に、LINEのビデオ通話で誰かと話していた。 「協力的な姿勢を見せるかどうかで……」。女性を威圧するような男の声だった。特殊詐欺ではないか。池田さんは思い切って、女性に声をかけた。 署によると、その日の夕方、女性に県外の警察官を名乗る男や検察官を名乗る男から電話がかかってきた。下4桁は「0110」だった。 「あなたが使っている銀行口座が悪用されている」「逮捕されれば禁錮3年になる。100万円振り込めば助かる」。その後、LINEでやりとりをするよう誘導され、ATMで100万円を振り込むよう指示されたという。 女性は当初、池田さんに「大丈夫だから」と応じた。だが、池田さんが「警察がLINEでやり取りすることはない」などと冷静に説得。女性に代わって池田さんがビデオ通話に出たところ、相手は非表示で、すぐに通話は切れた。その後、2人は相生署に行き、特殊詐欺だと分かったという。 池田さんは普段、市内の医療機関で高齢者らの日常生活を支援している。「声をかけるのは勇気が必要だったけれど、後になって後悔したくなかった。日常的に高齢の人と話す機会があり、その経験が生きたと思う」と話した。