『放送局占拠』“ミスリード”にシリーズファンが引っかかるワケ 秀逸な時間軸トリック

前半のクライマックスとして、盛りだくさんの情報が公開された『放送局占拠』第5話(日本テレビ系)。 武蔵裕子(比嘉愛未)の弟であり、武蔵三郎(櫻井翔)に憧れてBCCTへと異動した伊吹裕志(加藤清史郎)が、武装集団「妖」のリーダー・般若であったこと、妖のメンバー・化け猫が、2024年10月クールで放送された『潜入兄妹』にも登場した高津美波(入山杏奈)であることが明かされた。 特に言及したいのは、リアルタイムサスペンスという『占拠』シリーズの特徴を逆手に取った時間軸のミスリードだ。2024年に放送された『新空港占拠』では、武装集団「獣」と警視庁BCCTとの攻防と、裕子が武装集団「ケダモノ」の大河(ジェシー)に脅されてともに行動する様子が交互に描かれ、途中で話が合流するという展開があった。同じ時間に別の場所で起きていることを交互に描くことは、『占拠』シリーズでは当たり前のことだという思い込みが視聴者にもあっただろう。 3作続いているからこそできる時間軸を使ったミスリードは、特に第1話で慎重に描写されている。都知事選の討論会を前に、テレビ日本での警備についていたBCCTのメンバーたち。伊吹は駐車場の警備をしていたところ、武装集団に遭遇し、トラックで拉致されてしまう。拉致されるところを伊吹以外の人間が目撃したという展開はないが、伊吹が戸惑いながら武装集団に話しかけ、眠らされるという描写がある。もはや視聴者を騙すための会話といえる。 そして、一瞬防犯カメラを通してトラックで運ばれる伊吹が映るカットもある。武装集団に眠らされて拉致されたと、警察側に思い込ませるための行動だと示すカットとも捉えられるだろう。その後、般若は楽屋での打ち合わせに登場。同じ頃、伊吹のGPSがテレビ局を離れていく描写があることで、伊吹は拉致されたのだと思い込まされる。そして、伊吹の行く末が分からなくなり、和泉(ソニン)の「拉致された」というセリフの後に、伊吹が青鬼(菊池風磨)に捕らえられている場面に転換。「拉致された」というセリフの直後にその人物が捕らえられているシーンがあれば、同じ時間軸で拉致された先での状況が描かれていると認識するのが自然だろう。 『占拠』シリーズはリアルタイムサスペンスであるという思い込み、巧みなシーンやセリフの繋ぎによって生み出された時間軸のトリックなのだ。脚本上では、時間軸が同じであると思い込ませる調整がされている一方で、時間軸のズレに気付くヒントは小道具などで散りばめられている。青鬼と伊吹のパートを目を凝らして見直してみると時間軸がズレている証拠を見つけられるかもしれない。

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