米露首脳会談 アラスカで中身スカスカ ウクライナ停戦へ進展ゼロ トランプ氏異例厚遇もプーチン氏に軍配

トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が15日(日本時間16日)、米アラスカ州アンカレジの米軍基地で直接会談を行った。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の開始後、米ロ首脳が対面したのは初めて。トランプ氏はプーチン氏を厚遇で迎え入れたが、停戦に向けた合意は取り付けられなかった。一方で国際的に孤立するプーチン氏は米大統領と会う姿を世界にアピール。米メディアは「プーチン氏の勝利」との見方を示した。 エルメンドルフ・リチャードソン米軍基地の滑走路に敷かれたレッドカーペット。両脇にはステルス戦闘機を配置し、上空を戦略爆撃機がデモ飛行。ハリウッド映画のプレミア会場のような演出で、トランプ氏はプーチン氏を笑顔で迎えた。約6年ぶりの対面。和やかに会話を交わし、ツーショットで記念撮影。トランプ氏はその後、プーチン氏を大統領専用車ビーストに乗せ、会談場へ向かった。国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているプーチン氏に訪米機会を与え、軍事施設へも立ち入らせるという異例の待遇だった。 会談は予想の半分ほどの約2時間45分で終了。共同会見も異例の展開で、通常はホスト国の首脳が話すが、先に声を上げたのはプーチン氏だった。しかも約12分の会見の3分の2を費やした。「ウクライナ国民は兄弟」などと述べながらも「危機の根本的な原因を除去しなければならない」と、和平にはウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟放棄の確約が必要などとする従来の主張を強調。トランプ氏が「自分が大統領だったらウクライナ戦争は起きなかった」と述べたことを引き合いに出し、「私もそう思う」と持ち上げる場面もあった。 一方のトランプ氏に笑顔はなく、険しい表情。「多くの点で合意したが、大きい問題がいくつか残っている」などと曖昧な表現に終始。具体性がなく、停戦に関しては双方の主張に溝があったことをうかがわせた。 トランプ氏は、ロシアの収入源を絶つためロシアから石油や天然ガスなどを輸入する国に「2次関税を課す」としていたが、その発動も見送り。プーチン氏にとっては経済制裁を回避し、停戦交渉の時間稼ぎにも成功。しかも国際的に孤立する中、米大統領と会談という“イメージアップ”まで果たした。米メディアも「プーチン氏には成果がいくつもあった」「トランプ氏は手ぶらでホワイトハウスに戻ってくる」などと、プーチン氏の“勝利”だと伝えた。 プーチン氏は「次はモスクワで会おう」と英語でトランプ氏に提案。公の場で英語を話すのは極めて異例で、それほど上機嫌だったとみられる。得意の“ディール(取引)外交”に失敗したトランプ氏は、ウクライナのゼレンスキー大統領に電話で会談内容を伝達。18日にホワイトハウスで会談することも決まった。「ロシアと合意できるかどうかはゼレンスキー氏次第。取引に応じるべきだ」と、今度は“ディール”の矛先をゼレンスキー氏に向けている。 ≪露は「ゼロ回答」≫ 今回の米ロ首脳会談を、専門家はどのように評価しているのか。笹川平和財団の畔蒜泰助上席研究員(ロシア政治)は「戦況がロシア有利な現状で、プーチン氏主導のペースで進んだと言える。議論の中心はロシアが求める“戦争の根本問題の除去”に関してだったと見る」とした。 北海道大スラブ・ユーラシア研究センターの服部倫卓教授(ロシア経済)は「ロシア側は対米経済協力を重視し、停戦はゼロ回答ですれ違いが浮き彫りになった会談だった」と指摘。「プーチン氏は“次回はモスクワで”と述べたが、米国を敵に回さずに戦争を続けるため、停戦に向けた努力をしているというポーズを取っているに過ぎない」とした。 ロシアが持つ豊富な資源は、トランプ氏にとっても魅力的だ。新米国安全保障センター(CNAS)のジム・タウンゼント客員上級研究員は「ロシアとの経済協力に関心を持っているのは明らか」と話し、「米ロ関係の再構築に踏み出し、ウクライナに譲歩を迫る可能性もある」との見方を示した。 ≪ウクライナに米が割譲要求を伝達か≫18日のホワイトハウスでの米ウ会談では、停戦や米ロとウクライナによる3カ国首脳会談について協議するとみられる。ゼレンスキー氏はトランプ氏との電話会談で、3者会談について「米国の提案を支持する」と応じた。3者会談が開催されない場合やロシアが戦闘終結を拒否することがあれば、対ロ制裁を強化するべきだと伝達。「ウクライナの領土問題を含め、いかなる問題もウクライナ抜きでは解決できない」と改めて強調した。一方、米ブルームバーグ通信は、トランプ氏が電話会談で、ロシアがウクライナ東部2州の割譲を求めているとの見解を示したと報じた。

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