サントリーHD新浪剛史会長が辞任 「クーデターにはめられた」剛腕経営者に社内で反発か?

サントリーホールディングス(HD)は2日、新浪剛史会長(66)が1日付で辞任したと発表した。新浪氏が購入したサプリメントが違法の疑いがあるとして、福岡県警の捜査対象となったためだ。取締役や監査役の全員が一致して辞任を求める方針を確認し、新浪氏から「一身上の理由」とする辞任届を1日に受理した。同社は「捜査の結果を待つまでもなく、会長の要職に堪えないと判断した」と説明した。 同社はこの日、都内で会見を行い、鳥井信宏社長は「心よりおわびする」と謝罪。山田賢治副社長は「会長の仕事を続けられなくて残念に思っている」とする新浪氏のコメントを代読した。新浪氏は「違法であるとの認識はなかった」と説明したという。ただ同社は、サプリを扱う会社のトップとして、サプリ購入にはしかるべき注意を払うことが不可欠の資質だと指摘した。 捜査関係者によると、日本では違法性の疑いがある薬物類輸入に関する情報提供を門司税関(北九州市)から受け、福岡県警が8月22日に都内の新浪氏の自宅などを家宅捜索。本紙の取材では、新浪氏は潔白を主張し、尿検査は陰性で違法薬物も見つからなかった。県警は違法性の認識を含め、刑事責任の有無を慎重に調べている。 サプリには大麻由来の成分「THC(テトラヒドロカンナビノール)」が含まれ、新浪氏の知人女性が米国から送ったとみられる。関係者は「この女性の親族が違法薬物事件で逮捕され、その捜査の関連で新浪氏が関係先として浮上したと聞いています」と語る。 新浪氏は同23日から海外出張へ出発。家宅捜索の情報を知った同社が同28日に行った新浪氏を除く取締役らによる緊急会議では「解任すべき」との意見も出た。最終的には辞任を求める形となり、鳥井社長は新浪氏が帰国した今月1日にその旨を伝えた。その時の様子を「少し驚かれたが、反発があった印象はない」と明かした。だが、関係者によると、本人は嫌疑をかけられた段階で辞任を迫られたことに不服なようで、周囲に「クーデターにはめられた」と話しているという。 新浪氏は大学卒業後に三菱商事に入社。米ハーバード大ビジネススクールで経営学修士(MBA)を取得し、02年、43歳の若さでローソンの社長に転じた。プロ経営者として名をはせ、14年のサントリーHDのトップ就任は創業家以外で初めてだった。23年4月には経済同友会の代表幹事となり“財界トップ”に。今年3月にサントリーHDの会長となった。きょう3日、経済同友会の代表幹事の定例記者会見に出席し、自身の考えを表明する方針。関係者によると、現時点では代表幹事を辞める意思はないと周囲に漏らしており、発言に注目が集まる。 ◇新浪 剛史(にいなみ・たけし)1959年(昭34)1月30日生まれ、神奈川県出身の66歳。81年に慶大卒業後、三菱商事に入社。91年に米ハーバード大経営大学院修了。02年ローソン社長、14年5月会長。同年10月サントリーHD社長、25年3月会長。政府の経済財政諮問会議の民間議員も務める。 ≪日本で違法だが、米“合法”の州も≫ THCは大麻植物に含まれる化学成分で、米国では州によって含有量次第で合法とされている。海外ではサプリメントやオイルで流通し、腰痛や不眠に効いたり多幸感を覚えるとして人気がある。一方で幻覚作用や記憶への影響、学習能力の低下などをもたらし、依存性もあるため日本では違法とされている。最近では大麻ではなく、成分を入れた「大麻リキッド」「大麻ワックス」と呼ばれる新しいタイプの“濃縮大麻”も増加。微量で強い効果が出ることから、使い方次第では麻薬類に匹敵する危険性がある。

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