【神戸マンション24歳女性刺殺】「実像がつかめない」谷本容疑者の4畳半の居宅にある生活の〝残滓〟

神戸市中央区のマンションで8月20日夜、大手損保会社に勤務する住人の片山恵さん(24)がナイフで胸などを複数回刺されて殺害された事件で8月22日、兵庫県警が運送会社の社員・谷本将志容疑者(35)を殺人の容疑で逮捕。27日早朝には谷本容疑者が約2年間、生活していた東京都新宿区の運送会社の寮に家宅捜索が入った。 家宅捜索の開始から約2時間後、捜査員が段ボール2個分の押収品を運び出すと、部屋の中に立ち入らないことを条件に、谷本容疑者が事件直前まで暮らしていた部屋の撮影が許された。 四畳半ほどの個室で、トイレや風呂は共用。家具は冷蔵庫と電子レンジだけで、壁際に洗濯物が干されたままだった。複数の調味料や鍋などから、自炊していたであろう様子も見て取れる。そして、床の半分ほどを占めるベッドの枕元には親族のものと思われる2柱の位牌が置かれていた。 谷本容疑者は8月17日から休みを取り、神戸を訪れていたという。現場付近の防犯カメラの映像などから、犯行に及ぶまでの谷本容疑者の足取りが徐々に明らかになってきた。 「20日の夜、被害者が勤務先から自宅に帰るまでの約50分間にわたって、谷本容疑者は被害者の後をつけ、一緒にエレベーターに乗り込んだ後、犯行に及んでいます。逮捕直後は『被害者と面識はない』と供述していましたが、『事件2日前の18日朝に路上を歩いている被害者を見つけ、好みの女性だと思って後をつけた。そして、職場のビルに入っていくのを確認した』と新たな供述を始めました。 被害女性の職場付近に設置された複数の防犯カメラは、職場の建物を見上げたり、後をつけたり、被害女性に執着する谷本容疑者の姿を捉えていた。その前日の17日に別の女性を尾行する姿も確認されている。谷本容疑者は神戸中央区のホテルを拠点にして、好みの女性を探して神戸市内を徘徊していたとみられています」(全国紙社会部記者) 谷本容疑者が以前にも同様の犯行で、逮捕・起訴されていたこともわかっている。前出の社会部記者が解説する。 「裁判資料などによると、谷本容疑者は’20年9月、神戸市で片山さんとは別の女性に対して一緒にエレベーターに乗り込むなど、複数回つきまとったとしてストーカー規制法違反などの罪で神戸簡裁から罰金の支払い命令を受けています。 それから2年後の’22年5月には、やはり路上で見かけた20代女性に一方的に好意を抱き、約5ヵ月間にわたって、マンションに侵入するなどのつきまとい行為を行ったあげく、その女性の部屋に押し入って首を絞めるなどして殺人未遂の容疑で逮捕されています。その後、検察は殺人未遂ではなく傷害などの罪で起訴。同年9月、神戸地裁は『懲役2年6ヵ月、執行猶予5年』の判決を言い渡しています」 ◆再犯は「強く危惧」されていた 谷本容疑者とはどのような人物なのか。逮捕直後から取材を続けている全国紙在阪支局の記者は、「なかなか実像がつかめない」と嘆息する。 「谷本容疑者は大阪府豊中市の中学校を卒業後、コンピューター関係の学校に進み、その後は外食チェーンや建設会社に勤務していました。職場での評判はよく、信頼も厚かったようです。 親族の女性によると、幼い頃に両親が離婚して、父親に引き取られたものの、その父親はすでに他界。谷本容疑者はお墓参りにたびたび訪れていたということです。ただ、中学時代の谷本容疑者を覚えている人が本当に少なくて……。もともと目立たないタイプで、あまり登校していなかったようです。当時、住んでいた場所もわかりませんでした」 ’22年に執行猶予付きの判決が出た後、谷本容疑者は上京。千葉県内の建設会社に勤めた後、逮捕時に勤務していた運送会社で働いていた。家宅捜索された寮は会社に併設されており、谷本容疑者を含む5人の男性が暮らしていた。 見た限り、ごく普通の一人暮らしの男性の部屋で、とくに異常性は感じられない。優秀な働きぶりで社長からも目をかけられており、「親の介護のために300万円借金している」と話した容疑者に自己破産の手続きのための弁護士を紹介するなどしていたという。 件(くだん)の執行猶予付きの判決を言い渡す際、神戸地裁の安西二郎裁判官は谷本容疑者に対して「思考のゆがみは顕著であり、再犯が強く危惧されると言わざるを得ない」と指摘している。この言葉を彼はどう聞いたのだろうか。 人生をやり直すべく上京。この部屋で谷本容疑者は何を思っていたのか。「好みの女性を見つけ、後をつけて襲う」という欲求を抑制する術はなかったのか。なぜ、わざわざ休みを取ってまで神戸に向かったのか。真相解明が待たれる。 取材・文:中平良

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