長野県中野市で2023年5月、警察官を含む男女4人を殺害したとして、殺人罪などに問われた同市江部の農業青木政憲被告(34)の裁判員裁判が4日、長野地裁(坂田正史裁判長)で始まった。青木被告は起訴内容について「黙秘します」と述べた。 弁護側は起訴内容と刑事責任能力について争う姿勢を示した。一方、検察側は起訴前に実施した精神鑑定の結果などを踏まえ、犯行時は善悪の判断ができる状態だったと判断している。公判では刑事責任能力の有無が主な争点となる。 長野地検などによると、被告は23年5月25日午後、自宅近くで村上幸枝さん(当時66)と竹内靖子さん(当時70)の2人をナイフで刺すなどして殺害。通報で駆けつけた県警中野署の池内卓夫警部(当時61)と玉井良樹警視(当時46)=ともに2階級特進=に猟銃を発射するなどして殺害したとして起訴された。被告は翌日朝まで銃を持って自宅に立てこもり、その後逮捕された。 女性2人の殺害について、被告は捜査段階の調べに「(2人から)『(ひとり)ぼっち』と言われたように聞こえ、恨みを爆発させた」と動機を供述したとされる。法廷で被告が動機をどう説明するかも焦点だ。 初公判を前に村上さんと竹内さんの遺族は「なぜ大切な家族を奪われなければならなかったのか、裁判で見極めたい」「我々遺族の気持ちも裁判でお伝えしたい」とコメントした。 公判は精神鑑定を実施した医師への証人尋問や被害者側の意見陳述など計13回予定されている。判決は10月14日に言い渡される。 この事件は銃規制のあり方にも影響を与えた。被告が使ったハーフライフル銃と呼ばれる猟銃は事件後に所持するための許可基準が厳しくなった。(塩原賢)