11月14日に公開される飯塚花笑監督作『ブルーボーイ事件』の本予告と新場面写真が公開された。 『僕らの未来』(2011年)、『フタリノセカイ』(2022年)、『世界は僕らに気づかない』(2023年)など、トランスジェンダー男性であるというアイデンティティを反映した作品作りで国内外から注目を集める飯塚監督が、“性別適合手術”が違法とされた1960年代の事件から着想を得た本作。 東京オリンピックや大阪万博で沸く高度経済成長期の日本では、国際化に向け売春の取り締まりを強化する中、性別適合手術を受けた通称ブルーボーイたちを一掃し街を浄化するため、検察は手術を行った医師を逮捕。手術の違法性を問う裁判には、実際に手術を受けた証人たちが出廷した。飯塚監督は当時の社会状況と事件について徹底的に調査し、裁判での証言を決意したトランスジェンダー女性・サチを主人公に物語を構想。その渾身の企画に惚れ込んだのが、『深夜食堂』シリーズ(2009年~)をはじめ、『アヒルと鴨のコインロッカー』(2007年)、『岸辺の旅』(2015年)、『月の満ち欠け』(2022年)などを手がけてきた映画プロデューサー・遠藤日登思。遠藤は飯塚監督らと何度も脚本の改訂を重ねながら、オリジナル作品として本作を完成させた。 「この物語を描くには当事者によるキャスティングが絶対に必要」という監督の強い意志のもと、主人公・様々な経歴を持つトランスジェンダー女性たちを集めたオーディションによって主演に選ばれたのは、ドキュメンタリー映画『女になる』(2017年)への出演経験を持つ中川未悠。そのほか、裁判の証人となるサチのかつての同僚たちとして、映画初出演となるドラァグクイーンのイズミ・セクシーと、シンガーソングライターで俳優の中村中、ブルーボーイ役として真田怜臣、六川裕史、泰平らが出演する。さらにサチに証言を依頼する弁護士の狩野役を錦戸亮、彼と敵対する検事役を安井順平が演じるほか、前原滉や山中崇らも共演に名を連ねている。 公開された本予告には、1960年代に、性別適合手術を行った医師の裁判で手術を受けた女性たちが“幸せか不幸か”が議論される場面が映し出されている。証言台に立ったのは、性別適合手術を受け、恋人の若村(前原滉)と幸せな日々を送っていたサチ(中川未悠)。弁護士の狩野(錦戸亮)から証人として出廷してほしいという依頼を受けた当初、サチは「私は今、女として静かに生きています」と葛藤しながらも断る。サチのかつての同僚・アー子(イズミ・セクシー)は「何も隠さずに素直に生きられたら素敵だと思わない?」と自由に生きれる世の中を夢見ていた。そんなアー子にブルーボーイの元締めであるメイ(中村中)は「あんたの話は全部夢物語なのよ」と現実に目を向けるように厳しく言い放つ。同じ境遇であっても考え方は様々でブルーボーイの中でも困惑が広がっていく中、サチはアー子に背中を押されるように証言をすることに。しかし、証言台に立つことで弁護士から激しく尋問され、記者に追いかけられ憶測の記事が飛び交う事態に発展。サチは若村との幸せな日常を投げ出してもこの裁判に向き合う事を決意するが、彼女は何故証言し続けたのか。そして、裁判官の「あなたは今、幸せですか」という問いかけにサチはなんと答えるのか。 あわせて、物語の重要なシーンを切り取った9点の場面写真も公開された。