警察官のコスプレは法律違反?ハロウィンやイベントで知っておきたい境界線 弁護士が解説

友人たちとの夏祭り、特別な思い出を作ろうと警察官風のコスチュームに身を包んだ男性Aさん。しかし、その楽しみは、祭りを巡回していた本物の警察官から「その格好は法律に触れる可能性がある」と言われたことで一変してしまう。警察官のコスプレをして街を歩く行為は、本当に法律違反なのだろうか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。 ー警察官のコスプレは罪に問われる可能性はありますか 警察官のコスプレは軽犯罪法に抵触する可能性があります。軽犯罪法第1条15号にて、資格がないにもかかわらず、法律によって定められた制服やそれに似せたものを使用することを禁じているからです。 規定が存在する理由は、警察官の制服が持つ「公的な信頼」を保護するためです。もし誰もが本物そっくりの制服を自由に着られる社会になれば、市民は目の前の人物が本物の警察官か、コスプレをした一般人かを見分けられなくなるでしょう。 ー罪になる場合とならない場合の境界線はありますか 境界線は、「一般の人が見て、本物の警察官だと誤認するかどうか」という点にあると考えます。繁華街など公の場所で、誰が見ても本物と見間違うような精巧な衣装を着用した場合は罪に問われる可能性があります。階級章や警察手帳といった小道具まで模倣していると、その違法性はさらに高まるでしょう。 一方で、自宅で個人的に楽しむ場合や、演劇の舞台上など、それが「本物ではない」ことが明らかな状況下での着用は問題ありません。デザインを大幅に変え、明らかに「おもちゃ」や「ジョークグッズ」と分かるような衣装であれば、誤認の可能性が低いため、違法と判断されるリスクは下がるでしょう。 ーコスプレをした人物が警察官になりすました場合はどうなりますか 単に制服を着用しているだけにとどまらず、公務員としての権力を行使しようとする「官名詐称」とみなされる可能性があります。そうなれば、軽犯罪法違反だけでなく、より重い罪に問われるかもしれません。 また、警察官のコスプレが、詐欺などの別の犯罪行為と結びついた場合は、言うまでもなく厳しく処罰されるでしょう。 ー実際に検挙されたり、トラブルになったりした事例はありますか 現実問題として、単に警察官のコスプレをしていただけで即座に逮捕される事例は稀です。多くの場合、Aさんのように警察官から厳重注意を受ける程度で済むでしょう。ただし、これはあくまで「他の犯罪行為を伴わない」場合に限られます。 警察官のコスプレは、完成度や着用する場所、そして自らの行動によって、法律に触れるかどうかが決まります。イベントや祭りで非日常を楽しみたいという気持ちはわからなくもないですが、社会の信頼や安全を脅かす可能性をはらんでいることを忘れてはいけません。本物と誤認されるようなリアルな衣装での外出は避けたほうがいいでしょう。 ●北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。 (よろず〜ニュース特約ライター・夢書房)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする