アングル:米保守派カーク氏殺害の疑い ユタ州在住の大学生、タイラー・ロビンソン容疑者とは

Andrew Hay Nathan Layne Joseph Ax [米ワシントン郡(ユタ州) 12日 ロイター] – 18歳のタイラー・ロビンソン青年には、明るい未来が待っているように見えた。 大学入試で上位の成績を収め、ユタ州立大学から4年間の奨学金を得た。3人兄弟の長男である彼が奨学金授与を伝える大学の書簡を読み上げる様子を、母親は動画でフェイスブックに投稿。「息子はこの新たな旅の始まりに胸を躍らせている。素晴らしい経験になるはずだ」と記した。 だが、当局によればその4年後。9月10日、別の大学の建物の屋上からライフルを発砲し、保守系政治活動家チャーリー・カーク氏を殺害した疑いが持たれている。米国全土で、政治的暴力の高まりに対する新たな懸念が巻き起こった。 捜査当局は、ロビンソン容疑者(22)が犯行に至った経緯の解明を進めている。明確な動機は特定されていないが、当局の会見では複数の手がかりが示された。 ロビンソン容疑者は最近、ユタバレー大学でカーク氏が講演を予定していることに言及していた。親族がそう証言したという。スペンサー・コックス知事は「彼らは、カーク氏を嫌う理由やその主張について話していた」と述べたが、詳細には触れなかった。 さらに親族によると、ロビンソン容疑者は最近になって政治的発言をするようになった。当局によると、現場付近で見つかった弾薬には「おいファシスト、受け取れ」といった文言が刻印されていたという。 同容疑者は加重殺人などの疑いで逮捕された。州の記録によれば前科はなかった。 有権者登録はしていたが政党には所属しておらず、選挙記録では「非活動中」とされている。これは、ドナルド・トランプ氏がカマラ・ハリス氏を破った昨年の大統領選で投票していないことを示す。 事件当時、ロビンソン容疑者はユタ州南西部ワシントン郡にある実家で暮らしていた。 当局によれば9日、灰色の「ダッジ・チャレンジャー」で現場へ向かった。この乗用車は12日、アルファルファ畑に囲まれた新興住宅地の2階建て住宅前に停められていた。 事件後の現場には数十人の報道関係者が集まり、警察車両が通りに並んだ。容疑者の実家では警官が出動し、記者らが家に近づくのを阻止していた。 近隣住民のスティーブン・グリーンさんは同じ通りにあるモルモン教会に通っており、家族を知っていると言う。「立派な家庭で、良い子どもらだ」と語ったが、ロビンソン容疑者については詳しくは知らなかったと話した。 同じ高校で1年年下だったケイナン・ティモシーさんは、容疑者の実家から2ブロック離れた場所に住む。音楽に関心のある普通の生徒で、吹奏楽部員とよく一緒にいたと言う。 「顔見知り程度だった。ごく普通の子どもだ」とティモシーさん。「タイラーは大人しいが、極端に無口というわけではなかった」 当局によれば11日夜、ロビンソン容疑者がカーク氏殺害の責任を自ら認めるかほのめかしていたとの通報が家族の友人からあり、警察は無抵抗で彼を逮捕した。 <短期間の大学在籍> ロビンソン容疑者は2021年、ユタ州セントジョージのパインビュー高校を卒業した。ネット上に残る卒業式の映像には、壇上で卒業証書を受け取る同容疑者と、観客が歓声を送る姿が映っている。 同年の秋にはローガンのユタ州立大学に1学期だけ在籍したが、その後退学した。理由は分かっていない。ただ、同州のディクシー工科大学は、容疑者が電気工事士養成課程の3年生であると確認した。 母親のフェイスブックへの投稿によれば、容疑者は大学入学の共通試験「ACT」で34点を獲得し、プリンストン・レビュー社によれば受験者上位1%に入った。 両親の投稿によれば、彼には弟が2人いる。母親は非営利の医療会社でソーシャルワーカーを務め、父親は石材製カウンター製造会社の代表を務めているという。 母親の投稿の多くは12日に削除されたが、家族旅行や演劇、ハロウィーンの仮装、飼っているウサギ、子どもらの進級など、家庭生活を記録したものが大半で、政治色は見られなかった。 一部の投稿には、ロビンソン兄弟が銃を持っている姿もあったが、銃規制の緩いユタ州では珍しい光景ではない。 11日夜の容疑者逮捕により、33時間に及ぶカーク氏殺害犯捜索は終結した。捜査では10日に「参考人」として2人が一時拘束されたが、その後釈放されている。 ロビンソン容疑者は事件現場の大学から南へ約19キロに位置するスパニッシュフォークのユタ郡刑務所に収監された。正式な起訴はまだ行われていない。

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