「『面倒をみるよ』と言ったのに」…解雇のエチオピア国籍男「元上司を包丁で」供述した「我慢の限界」

事件発生から3時間ほど経っても警察官が行きかい、現場周辺は物々しい雰囲気に包まれていた。 「人が刺されたみたいですよ。東京のど真ん中で物騒な事件が起きるとは……」 近くにいた40代女性が、おびえた様子で話す。記者が9月12日の夜に訪れたのは、東京・赤坂(港区)の飲食店が集まる繁華街。同地区に建つビル内で、30代の男性が刃物で刺されたのは夕方5時半ごろのことだった――。 事件現場のビルで、殺人未遂の疑いで現行犯逮捕されたのはエチオピア国籍の男ゲブレマリアム・メスフィン・ムラレット容疑者(61)だ。ゲブレマリアム容疑者は、ビルの3階にオフィスがあるアパレル関連会社の30代男性役員Aさんの腹を、刃渡り約25㎝の包丁で刺したとされる。 「『従業員が刺された』という110番通報を受け警察官が駆けつけると、ゲブレマリアム容疑者の近くには血がベットリとついた包丁があったそうです。刺されたAさんはスグに病院へ搬送されましたが意識不明の重体(その後、意識回復)。ゲブレマリアム容疑者から包丁を取りあげようとした別の男性従業員も、指を切り軽傷を負いました」(全国紙社会部記者) ◆「裏切られた気持ちに」 ゲブレマリアム容疑者は、Aさんが勤める会社が経営していたバーの元バーテンダー。1年ほど前に会社が経営から手を引くと解雇された。警察の取り調べに対し、ゲブレマリアム容疑者は犯行動機について次のような供述をしているという。 「解雇されて裏切られた気持ちになりました。(Aさんは)『次の職場の面倒をみるよ』と言ったのに(仕事を)紹介してくれなかった。何回か相談したが状況が変わらなかったので我慢の限界でした。(所持していた包丁で)何かあったら脅すつもりだった。興奮してしまい、事件当時のことは覚えていません」 元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。 「外国人従業員とは、丁寧にコミュニケーションをとらないと今回のような重大トラブルに発展しかねません。Aさんからすると『職場の面倒をみるよ』という発言は、親切心から出た日本人らしい曖昧な社交辞令でしょう。『何か良い仕事が見つかったら紹介する』ぐらいの意味で、具体的なプランがなかったのかもしれない。 一方、外国人の容疑者からすれば元上司に『面倒をみる』と言われたら『将来を保障してもらった』と感じたのかもしれません。具体的に仕事を斡旋してもらえると。容疑者はAさんの親切心が理解できず、まったく状況が変わらないことを逆恨みして犯行におよんだと思われます」 9月14日に行われた送検で、ゲブレマリアム容疑者はうつむいたまま報道陣を見ることなく護送車に乗り込んだ。

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