衝動抑えられず万引を繰り返す「窃盗症」 45歳シングルマザーが法廷で明かした胸の内

金があるのに万引してしまう。それが特にほしい商品でなくても-。衝動を抑えられずに窃盗を繰り返してしまう「クレプトマニア」(窃盗症)という精神疾患が近年、注目されるようになり、治療態勢も整いつつある。スリルや高揚感を満たすため、犯行に走ってしまうという患者の心理はどのようなものか。1人の女性が法廷で明かした。 大阪府内の複合施設で働く女性(45)が仕事を終え、施設内のスーパーに立ち寄ったのは昨年10月29日昼のことだった。現金は持っており、スマートフォンアプリで決済もできるが、選んだのは万引。「1つとったら後は一緒」と約10分間で茶のパックや入浴剤などを持参したエコバッグに次々と入れていった。 その様子を警備員が目撃していた。後を追い、女性の車の前に立ちはだかった。ボンネットにつかまる警備員を振り落とそうと、女性は前進後退を繰り返し、警備員は転落して足を骨折。女性は逃走したが、3日後に逮捕された。 強盗致傷罪に問われ、今年6月に始まった刑事裁判で、女性は自身の胸の内を明らかにした。 被告人質問によると、初めて万引したのは高校生の時。勉強への不安や人間関係の悩みが発散されたという。そのうちに自然とやめられたが、シングルマザーになった平成28年ごろから再び窃盗衝動に駆られるようになった。 「将来の金銭面が不安で節約しないといけない」「周りは遊んでいるのに、なぜ自分だけ我慢しているのか」。そんな思いがあったと訴えた。 今回の事件前も同じスーパーで万引し、見つかったことがあった。そのときは商品代金の弁償で済み、二度と入店しない「出禁」を約束した。ところが、「だめだ」「もうしない」と頭では分かっていても、万引を繰り返したという。 逮捕から約1カ月間、勾留された。一人息子や両親と離れて過ごし、「絶対に再犯したくない」と心から思った。保釈後に訪れた心療内科で医師から「窃盗症」という病名を聞き、患者が集まるミーティングに参加した。 「初めて誰かに自分の気持ちを話して、過去の自分と向き合うことができた」。心療内科での診察と合わせ、万引の原因はストレスをコントロールできなかったことだと気づいた。なぜ万引をしたくなるのか。メモに書いて自己分析し、金銭面の不安も「何とかなる」と考えられるようになったことで万引衝動はなくなったという。

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