韓国当局は23日、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁(82)を、不正請託、贈賄、業務上横領など容疑4件で逮捕したと発表した。物議を醸している旧統一教会の事業に前韓国大統領夫人が便宜を図り、その見返りに旧統一教会がシャネルのバッグなどを贈った疑いが持たれている。 旧統一教会は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の妻、金建希(キム・ゴンヒ)氏に、シャネルのバッグ2点とダイヤモンドのネックレス、総額8000万ウォン(約850万円)相当の賄賂を渡したとされる。 金建希被告は先月12日に収賄など複数の容疑で逮捕された後、8月29日に起訴されている。 旧統一教会の創設者、故・文鮮明(ムン・ソンミョン)氏の妻である韓総裁は、4件の容疑は「虚偽」だとして繰り返し否定している。 教団は23日、当局に「誠実に対応」し、「この機会を教団への信頼回復に最大限活用する」と表明した。また、「国民に懸念を与えたこと」を謝罪した。 検察は先週、韓総裁の逮捕状を請求していた。 22日にはソウル中央地裁で逮捕状について審理が行われた。地裁に出頭した韓総裁は容疑を否定し、政治への関心も知識もないと主張。弁護団は、韓総裁が高齢であることと、健康状態の悪化を理由に逮捕状発行に反発していた。 韓総裁は教団元幹部と共謀し、2022年の韓国大統領選に先駆け、保守派の権性東(クォン・ソンドン)議員に1億ウォンの賄賂を渡し、尹錫悦氏(現在は内乱罪で起訴)が当選した際には教団に便宜を図ってもらうよう働きかけた疑いも持たれている。尹氏はこの大統領選で当選した。 かつては尹前大統領の側近とされていた権議員は17日に逮捕されたが、賄賂は受け取っていないと主張している。 統一教会は、前大統領夫人と権議員に関する一連の贈賄疑惑について、教団元幹部のユン氏が単独で行ったものだと主張している。この元幹部もすでに逮捕されている。 金建希被告は先月、収賄や株価操作など複数の罪で起訴され、今週から公判が始まった。本人は罪状について否認している。 金被告の夫の尹前大統領は、昨年12月の非常戒厳の宣布をめぐり今年1月に拘束された。4月には憲法裁判所が尹氏に対する国会の弾劾訴追を裁判官の全員一致で妥当と判断し、尹氏を罷免する決定を言い渡した。尹氏は直ちに失職した。現在は内乱罪で起訴され、いったん釈放されたものの7月に再逮捕された。 尹被告と金被告は、韓国の大統領経験者とその配偶者が同時に勾留される初めてのケース。 ■旧統一教会とは 旧統一教会は1950年代に、文鮮明(ムン・ソンミョン)氏によって韓国で創設された。文氏は「救世主」を自称していた。創始者の名前から、欧米などでは信者を「ムーニーズ」とも呼ぶ。 旧統一教会は「カルト的」と評されてきた。信者に多額の献金を強要していると、複数の弁護士が非難している。何千組ものカップルが参加する合同結婚式で知られ、結婚式の直前に教団がマッチングするカップルも含まれる。 日本の安倍晋三元首相の暗殺事件をきっかけに、旧統一教会はあらためて注目を集めた。容疑者の男は、多額の献金で自分の家族が自己破産に追い込まれたと恨み、安倍氏が教団にビデオメッセージを寄せたことなどから教団に近い関係だと思っていたとされる。 旧統一教会はシンガポールなど世界の一部地域で、活動を禁止されている。日本では3月に解散命令が出されている。 (英語記事 'Moonies' church leader arrested over gifts to ex-South Korean first lady)