宝塚・ボーガン死傷事件 発生から5年、初公判「側頭部は死に至る」検察側、計画性指摘 神戸地裁

兵庫県宝塚市の住宅で2020年6月、ボーガン(クロスボウ)を使って家族3人を殺害、親族1人に重傷を負わせたとして、殺人、殺人未遂の罪に問われた無職の男(28)の裁判員裁判が25日、神戸地裁で始まった。判決は10月31日。 男は罪状認否で、起訴された内容を認めた。逮捕段階でも「家族全員を殺すつもりだった。祖母、弟、伯母、母の順番で撃った」と供述し、容疑をおおむね認めていた。争点は、被告の刑事責任能力の程度になる。 起訴状によると、男は2020年6月4日午前5時ごろから10時10分ごろまでの間に自宅で、祖母の(当時75)、母親(同47)、弟(同22)の頭部にボーガンの矢を放って殺害し、伯母(現在55)に対しても、首の骨を折るなどの傷害を負わせたとされる。 検察側の冒頭陳述によると、「被告は従来、人とのコミュニケーションが極端に苦手な『自閉スペクトラム症』と強い不安や恐怖心を持つ『強迫性障害』があった。母親がうつ病を発症し、家庭での役割を果たさないことなどから不信感を抱いていた。一時期は精神的に安定していたが、大学在学時に将来への展望を持てず、自殺を考えるようになった。さらに家庭を崩壊させて自分も命を絶とうと思うようになった」と犯行までの経緯を説明。 そして、「ボーガンの殺傷能力の高さを知り購入、インターネットで検索し、側頭部を狙うと死に至りやすいことを知り、殺害を実行する決意をした」と指摘し、 「責任能力はあった」として、犯行への計画性の高さと残虐性を強調した。 一方、弁護側は「男は犯行当時、物事の善悪の判断能力が著しく減退している心神耗弱(しんしんこうじゃく)状態だった」と述べ、責任能力は完全に備わっていなかったとして争う姿勢を示した。 神戸地検は、2度の延長を経て約半年にわたり男の精神鑑定を行った。その結果、事件当時の精神状態などから責任能力があったと判断。2021年1月に起訴したが、男は心身の不調を訴えたため、2022年10月に予定されていた公判期日が取り消され、事件発生から5年3か月を経て初公判を迎えた。 事件発生時、ボーガンは銃刀法の規制対象ではなかった。 しかし、その後も重大な事件が相次いだことを受けて、2022年には改正銃刀法が施行され、ボーガンを所持するには都道府県公安委員会の許可が必要となった。

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