三島由紀夫作、宮本亞門演出による舞台『サド侯爵夫人』が2026年1月8日(木)より東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演されることが決定。東京公演終了後は大阪・森ノ宮ピロティホール、愛知・とよはし芸術劇場、福岡・福岡市民ホール中ホールにて巡演される。 生誕100周年を迎え、数多くの作品が日本国内にとどまらず世界中で愛されている作家・三島由紀夫。翻訳上演されている作品の中でも『サド侯爵夫人』は、人間の心の奥底に潜む欲望や葛藤を美しくも残酷な言葉で浮かび上がらせる傑作として知られている。また、演出を手掛ける宮本亞門はこれまでも舞台『金閣寺』や『ライ王のテラス』、オペラ『金閣寺』や『午後の曳航』など、その深い洞察により多くの三島由紀夫作品に次々と息吹を与えてきた。 全3幕からなる本作の舞台は18世紀のフランス。第1幕はアルフォンス(サド侯爵)の妻・ルネの母親であるモントルイユ夫人が、数々の乱行と娼婦虐待により当局に追われていたサド侯爵の無罪を勝ち取るため、二人の女性を邸宅に招くところから始まる。一人は敬虔なクリスチャンのシミアーヌ男爵夫人、もう一人は性的に奔放なサン・フォン伯爵夫人。モントルイユ夫人は彼女たちの力を借りて裏工作をしようとするが、ルネの妹・アンヌがイタリアでアルフォンスと性的関係を持ったことを知り激怒。裏工作を取り消す手紙を家政婦シャルロットに託し、国王にアルフォンスの逮捕と投獄を嘆願する手紙を届けに行くことを決意する。 第2幕はその6年後の1778年。ルネの計らいにより脱獄していたアルフォンスがモントルイユ夫人の策略により再逮捕され、再審で釈放が決まるも直後に王家の警官に捕らえられ、より厳重な牢獄へ送られてしまう。これが全てモントルイユ夫人の策略だと知ったルネ夫人は母に激しく詰め寄り、二人の間で激しい言葉の応酬が繰り広げられる。 そして第3幕の舞台は、フランス革命勃発から9ヵ月経った1790年4月のパリ。かつてサド侯爵を激しく嫌悪していたモントルイユ夫人は、革命という時代の変化の中で彼の出所を待ち望むようになっていた。一方のルネ夫人は、夫の釈放が近づく中で修道院に入ることを決意する。それは夫が獄中で書いた小説『ジュスティーヌ』を読み、サド侯爵がもはや悪行を超えた神の領域にまで達したと悟り、修道院で神意を問う決意を固めていたからだった。 本作ではサド侯爵自身は姿を見せず、その周りを取り巻く女性たちの会話劇により物語が展開。さらに今回はオールメール(全員男性)キャストとなり、ミシマ作品を知り尽くした宮本のもと、個性的な俳優たちが集結した。 18世紀フランスを舞台に、悪徳の限りを尽くしたサド侯爵を待ち続ける貞淑な妻・ルネ/サド侯爵夫人役に成宮寛貴、サン・フォン伯爵夫人役に東出昌大、ルネの妹・アンヌ役に三浦涼介、ルネの友人・シミアーヌ男爵夫人役に大鶴佐助、女中・シャルロット役に首藤康之、そしてルネの母・モントルイユ役を加藤雅也が演じる。なお主演の成宮寛貴は、2000年に宮本が演出を手掛けた『滅びかけた人類、その愛の本質とは…』で初舞台を踏み芸能界デビュー。本作で25年ぶりの再会となり、成宮自身12年ぶりの舞台で信頼し合っている2人の宿命ともいうべき再タッグが実現する。 実力派俳優の競演による物語で炙り出されるのは、愛や忠誠、道徳、そして人間の欲望と倫理の対立。宮本は今回の『サド侯爵夫人』について、「演劇的・装飾的なものを極力排除し、言葉の力だけで紡ぎ出す」と語っている。 〈コメント一覧〉 宮本亞門(演出): 念願であった日本演劇界の頂点とも言える、三島由紀夫氏の『サド侯爵夫人』を新たに創り出す喜びに胸が震えています。 成宮君をはじめとする個性あふれる俳優たちと共に、危殆と破壊の縁に立ち上がる高揚を、かつてない舞台として結晶させお見せします。 来年一月――破壊からこそ生まれる美の昂奮を、どうぞご期待ください。 成宮寛貴(ルネ/サド侯爵夫人役): 再び舞台という“生”の場所に立てることに、静かな高揚を感じています。 『サド侯爵夫人』という極限まで研ぎ澄まされた世界の中で、人間の愛と狂気、そして内面に潜む声を辿っていく時間になると思います。 今回、12年ぶりに舞台に挑戦します。 三島由紀夫の戯曲に向き合うことは、俳優にとって大きな試練であり喜びでもあります。 鋭く精緻な言葉に呑み込まれるのではなく、自分の身体と声を通してどう響かせられるか──その覚悟をもって臨みたいと思います。 そして演出を務めてくださるのは、僕が俳優デビューした舞台でもご一緒した宮本亞門さん。 あのときから年月を重ね、25年ぶりに再びこのタイミングでタッグを組めることに、運命的な巡り合わせを感じています。 俳優という仕事に再び身を委ねるなかで、今の自分だからこそ触れられる感情や言葉があると信じています。 劇場という濃密な空間で、観客の皆さんと同じ時間を生きられることを心から楽しみにしています。 東出昌大(サン・フォン伯爵夫人役): 世界の演劇界に燦然と輝く傑作『サド侯爵夫人』に出演出来ますことは、私の俳優人生に於いての誉れです。 また『豊饒の海』の舞台を共に作り上げた盟友、首藤さん、佐助と再びご一緒出来る喜び。 そして、初めてお目見えする宮本亞門さん、加藤さん、成宮さん、三浦さんとの邂逅。全てが楽しみで仕方ありません。 十代後半より三島由紀夫作品を愛読して参りました。 その後役者になり、舞台『豊饒の海』や映画『三島由紀夫VS東大全共闘』などの作品で“三島”に関われる機会に恵まれてきましたが、この令和の世に『サド侯爵夫人』を男性キャストで公演すると聞いた際は、魂の微振動を感知したことを覚えております。 絢爛豪華な美文に負けぬ熱演を致します。 三浦涼介(アンヌ役): 「サド侯爵夫人」ルネの妹。アンヌ役を演じます。三浦涼介です。 三島由紀夫生誕から100年。そのような新たな歴史のスタートにこのような出演のお話を頂き心より感謝します。 宮本亞門さんとの出会いはずっと願って居た事であり、今回初めてお会い出来る事…僕自身とても嬉しく思っています。 サド侯爵夫人は三島さんの作品の中でも過去に数多くたくさんの方々がこの戯曲の夢を叶えてきた事だと思います。 読むごとに新たな発見を与えてくれる三島由紀夫作品ですが、三島さんの文学をどう紡いでゆき自分の身体や咽喉を使いアンヌの言葉を伝えていけるかワクワクしています。 出演者男性役者での上演。男性が女性を演じる事への美学やエロスも非常に興味深く、この時代だからこそ一歩も二歩も”前のめり”にこの作品の持つ魅力が溢れ出てくるんでは無いでしょうか。そして舞台という魅力も。 僕自身、近年舞台に多く立たせて頂いて居ますが、やはり劇場で生でその全てを目撃して頂きたいと心から思います。 そこには何のフィルターも無く、その場でお客様と共に作品を作り上げる。お客様が着席されて初めて完成する瞬間があります。そう考えると毎日が初日になるわけですが、ドキドキしますよね。そのドキドキを共にその日を心待ちにして頂けます様に。精一杯に心を込めて演じて参ります。 大鶴佐助(シミアーヌ男爵夫人役): サド侯爵については初め性的倒錯者としての印象が強かったのですが、宗教や道徳などの固定概念の全面的否定や徹底的な自然主義など、本人の絶対的な美学の上での行いだった事を知り、自分の中で見方が少し変わりました。 「サド侯爵夫人」は全編女性の会話劇ですが、女性達の中に常にサド公爵が存在しているからかなのか、三島由紀夫の美学とサド公爵の美学が似ているからなのか、男性が演じると考えても台詞に違和感を感じませんでした。 三島由紀夫作品は「豊饒の海」以来ですが、戯曲を演じるのは初めてですので、三島の書いた台詞をどう立ち上げていくか今から楽しみです。 首藤康之(シャルロット役): 今回、宮本亞門さん演出舞台『サド侯爵夫人』に関わる事ができることを嬉しく思います! 私のキャリアはフランス人振付家モーリス・ベジャールさんが三島由紀夫さんをモチーフに創作した作品『M』からはじまりました。 未だミステリアスかつ不可解な事が多いこの作家の真実や愛に少しでも近づけることを願いながら、素晴らしい共演者の方々と丁寧に稽古をしてまいりたいと思っております。 加藤雅也(モントルイユ夫人役): 私が45歳で初めて舞台に挑戦してから、早いもので17年が経ちました。 これまで携わってきたのは、どちらかといえばエンターテインメント性の強い作品が多かったのですが、心のどこかで「いつかは三島作品やシェイクスピア作品のような芸術性の高い舞台にも挑戦してみたい」と願っておりました。 もしかしたらそのような機会は自分には訪れないのかもしれない……と半ば諦めかけていたところに、今回のお話をいただきました。 驚きと喜び、そして「果たして自分ができるのか」という不安がよぎりましたが、思わず「やります!」と即答してしまいました(笑)。 台本を手にした瞬間、セリフの多さに「これは大変なことになったぞ(笑)」と覚悟を決めると同時に笑みがこぼれ、まだ稽古もしていないのに早くも“セリフが出てこない夢”を見る始末。 夢に見るぐらい不安を抱いている自分に少し可笑しさを感じました。 もう後戻りはできません。全力でモントルイユ夫人と向き合い、皆さまに楽しんでいただける舞台をお届けできるよう励んでまいります。 全身全霊でモントルイユ夫人を演じきりたいと思っております。 温かく見守っていただけましたら幸いです。 〈作品情報〉 舞台『サド侯爵夫人』 【東京】2026年1月8日(木)~2月1日(日) 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 【大阪】2月5日(木)~8日(日) 森ノ宮ピロティホール 主催:関西テレビ/キョードー大阪/サンライズプロモーション 【愛知】2月13日(金)・14日(土) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール 主催:サンライズプロモーション 【福岡】2月17日(火)・18日(水) 福岡市民ホール中ホール 主催:TNCテレビ西日本/サンライズプロモーション 協力:キャナルシティ劇場 後援:福岡市 チケット発売:2025年10月25日(土) 一般発売 チケット料金:11,000円/U-25 6,600円(観劇時25歳以下対象、要身分証明書)