トランプは「左派のせい」と主張するが…トランプ政権誕生後、米で政治的暴力が倍増した理由

暗黒の時代を今日で終わらせるか、それとも「もっと暗い時代の始まり」とするか、選ぶのは私たち自身だ──米ユタ州のスペンサー・コックス知事(共和党)は9月12日にそう訴えた。2日前には州内の大学で開かれた討論集会で、31歳の保守系活動家チャーリー・カークが狙撃され、死亡していた(カークはドナルド・トランプ大統領の熱烈な支持者だった)。 だが悲しいかな、この国の政治的暴力に詳しい識者の多くは、既にアメリカは危険な新時代に突入したと警告している。下手をすれば多くの政治家が暗殺された1960年代の再来であり、早急に手を打つ必要があると。 シカゴ大学の政治学部教授で同大学の「安全保障と脅威プロジェクト(CPOST)」を率いるロバート・ペイプによれば、今のアメリカでは左右を問わず「政治的暴力に対する支持が高まっている」。 去る6月14日にミネソタ州の州議会議員2人(いずれも民主党)が銃撃され、うち1人とその配偶者が死亡したとき、ペイプはニューヨーク・タイムズ紙に寄稿して「アメリカ政治は極めて暴力的な時代に突入する瀬戸際」にあると警告していた。 「その警告がついに現実となった」。ペイプはそう語り、今のアメリカは「暴力的ポピュリズムの時代」を迎えており、「右派と左派の両方における政治的暴力の激化」が顕著だと指摘した。 ここ数年、アメリカでは深刻かつ派手な政治的暴力行為が頻発し、民主党と共和党双方の政治家が狙われてきた。まずは2021年1月6日にトランプ支持派による連邦議会議事堂襲撃があった。翌22年には保守派の最高裁判事ブレット・キャバノーに対する暗殺未遂と、当時の下院議長ナンシー・ペロシ(民主党)の誘拐未遂があった(サンフランシスコの自宅に男が侵入し、夫が負傷した)。 24年7月には大統領選で遊説中のトランプが銃撃され、耳にかすり傷を負った。同年12月にはニューヨークのど真ん中で医療保険大手ユナイテッドヘルスケアのCEOが射殺された(左派の一部には容疑者ルイジ・マンジョーネを英雄視する向きがある)。 まだ数カ月を残しているが、今年も格別に暴力的な年となりそうだ。メリーランド大学のテロデータベースによれば、今年上半期に国内で起きた政治的動機による暴力行為は約150件で、前年同期の倍近くとなる。

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