7月の参院選で自民党公認候補へ投票する見返りに報酬の支払いを従業員らに約束したとして、パチンコ店運営会社社長らが逮捕された事件について、警視庁と7県警の合同捜査本部は26日、捜査を終結したと発表した。これまでに計236人を公職選挙法違反容疑で摘発したといい、平成以降の国政選挙で最大の買収事件になった。 捜査本部などによると、パチンコ店運営会社「デルパラ」(東京都港区)とグループ会社「モリナガ」(鹿児島市)の社長で韓国籍の山本昌範(本名・李昌範)被告(50)=東京都港区=らは7月、店長らと共謀し、パチンコ業界初の組織内候補として比例区に立候補した阿部恭久氏(66)に投票する見返りに、従業員らに現金3千~4千円を渡すと約束したとされる。 捜査本部は8~9月、山本被告ら幹部と店長ら計33人を同法違反(買収約束)容疑で逮捕したり、書類送検したりした。約束に応じた疑いがある従業員ら203人についても同法違反(被買収約束)容疑で書類送検した。摘発人数は計236人にのぼり、警察庁などによると、平成元(1989)年以降の国政選挙の買収事件としては過去最大の人数となった。 過去には、90年の衆院選で石川県警が落選候補をめぐって158人(買収総額207万5千円)、92年の参院選で兵庫県警が落選候補をめぐって129人(同2112万7900円)、95年の参院選で山形県警が当選候補をめぐって134人(同48万円)を摘発した事件などがある。 ■捜査幹部「自由な投票行動に支障」 今回の事件をめぐっては、従業員らが投票所で阿部氏の名前を書いた投票用紙を撮影し、店長側にその写真を送信していたケースも多かった。捜査幹部は「会社ぐるみで阿部氏以外への投票を心理的に難しくさせ、意志ある有権者である従業員らの自由な投票行動に支障を及ぼした犯行で、極めて悪質だ」と話した。(三井新、西岡矩毅、編集委員・吉田伸八) ■平成元(1989)年以降の国政選挙で警察が摘発した大規模買収事件 90年衆院選 石川県警 落選候補をめぐって158人摘発、買収総額207万5千円 92年参院選 兵庫県警 落選候補をめぐって129人摘発、買収総額2112万7900円 95年参院選 山形県警 当選候補をめぐって134人摘発、買収総額48万円 ※警察庁などへの取材による