子供の安全とプライバシーどう両立 相次ぐ教員の性加害、教室への防犯カメラ設置の是非

教員による盗撮など学校内でのわいせつ事案が後を絶たない。このため議論が加速しているのが教室における防犯カメラの設置の是非だ。独自の対策に乗り出した自治体や学校もあるが、子供のプライバシーを侵害する懸念もある。 「他の人が盗撮動画を投稿しているのに感化され、軽い気持ちで投稿した」 女子児童を盗撮し、SNSのグループチャットで画像を共有したとして、名古屋や横浜の現職の小学校教諭らが相次いで逮捕、起訴された事件は同世代の子供を持つ保護者らに衝撃を与えた。今月、性的姿態撮影処罰法違反容疑で愛知県警に新たに逮捕された北海道千歳市立中の教諭は調べにこう供述したという。本来子供を真っ先に守るべき立場の教員が、子供に対する性加害行為を仲間内で競うような犯行の態様は、学校現場における病巣の根深さをうかがわせる。 ■性犯罪は初犯9割 相次ぐ子供の性被害を防ごうと、昨年6月には「こども性暴力防止法」が成立。教員らによる性暴力を防ぐことは学校設置者の責務と位置付けられ、子供と接する仕事に就く人の性犯罪歴の有無を、雇用主側が確認する「日本版DBS」も運用されることになった。 ただ性犯罪において摘発事例の9割を占めるのは再犯ではなく初犯だ。日本版DBSによる再犯対策とは別に、そもそも被害を出さないようにする未然防止を重視し、いち早く対策に乗り出した自治体もある。 市立中の講師による学校内での盗撮未遂事件が発生した愛知県みよし市では、市内小中学校全12校に防犯カメラ計約200台を設置することを決めた。設置費用約5800万円を盛り込んだ補正予算案を市議会に提出し、来年4月から運用を開始する方針という。 計画では各学校の廊下にカメラを設置し、更衣室や教室、トイレの出入り口を監視する。小山祐(たすく)市長は今月2日の会見で「犯罪抑止だけでなく、トラブル検証にも役立つと考えている」とその意義を強調した。 そもそも学校の防犯カメラは外部からの不審者対策として普及し、6割以上の学校で設置が進んだ。そうした従来の目的とは逆の方向で、内部に対する抑止力にしようというのが施設内防犯カメラの設置の議論だ。こども性暴力防止法の運用ルールに関する有識者の検討会で今月、こども家庭庁は学校での性暴力を防ぐためにも、防犯カメラ設置が「有効」とする中間とりまとめ案を提示した。

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