(ブルームバーグ):フランスの超富裕層は、いずれにせよ増税の標的となりそうだ。 政治的な生き残りに向け綱渡りを強いられている39歳のルコルニュ首相は、左派や極右だけでなく、自らが属する中道派からも、富裕層の税負担を増やすよう圧力を受けている。フランスの債務残高はユーロ圏最大で、財政再建が政府の課題だ。 だが、ルコルニュ氏は26日、経済学者のガブリエル・ズックマン氏の名を冠した提案を含む、全般的な富裕税の導入を求める声を批判した。一方で、「公正な税制」に対するフランス人の要求を無視することはできないと述べ、超富裕層を標的とする措置をとる可能性を排除しなかった。 フランスでは富裕層の税負担を引き上げるべきかどうかを巡り、これまでになく議論が白熱している。パリなどの都市では「富裕層から取り上げろ」と書かれたプラカードを掲げた人々がデモ行進を行い、富豪ロドルフ・サーデ氏とその一族が支配する海運大手CMA CGMの本社封鎖を計画していた人々を警察が逮捕した。テレビの討論番組は、決まって不平等や税負担の公正さをめぐる議論になる。 2026年度予算案は10月には議会に提出される必要がある。現在の議会勢力図を勘案すると、ルコルニュ氏が予算案を通過させるには、不信任動議に社会党またはマリーヌ・ルペン氏率いる極右・国民連合(RN)が棄権することが必要になる。 両政党ともバイル前首相の支出削減案には反対し、「税の公正」でルコルニュ氏が譲歩しない場合は追い落とすと警告している。このためルコルニュ氏にとって富裕層増税は政治的・財政的な窮地からの突破口になり得る一方、マクロン大統領が推進してきた企業寄りの政策を損ねる格好になる。 ルコルニュ氏はパリジャン紙に対し、一部の税率を引き上げる代わり、ほかを引き下げる提案をすると述べ、最終的に何を予算案に盛り込むかは議会に決定を委ねると語った。急進的な富裕層増税については警戒感を示した。