「性行為でなければ祓えない」除霊と称して性的暴行を働いた男が恐怖で被害者を支配した〝悪辣手口〟

「(ビデオ通話で)犯人が、『ずっと、あなた以外の声が聞こえる。霊が憑きすぎていて、あなたの顔が見えない』などと話してきたので、恐怖のほうが高まってしまいました」 霊媒師と称する男は、このように霊の存在を用いて、相手の恐怖心をあおったという。 「6月19日、警視庁新宿署は、今年の3月に『除霊』と称して20代の女性Aさんに性的暴行を加えたとして、岩手県奥州市居住の自称・霊媒師、佐藤晋悦(しんえつ)被告(28)を不同意性交等の疑いで逮捕しました。佐藤被告はAさんに対して、『体を使ったお祓いをしないと霊が祓えない』などと言って、犯行に及んだとみられています。佐藤被告は、『女性に憑いている霊を祓うために塩を置いたり、お経を読んだりしたが、性的な行為は一切していない』と容疑を否認しているということです。 さらに新宿署は8月7日までに、Aさんとは別の女性に性的暴行を加えたとして、不同意性交等の容疑で佐藤被告を再逮捕しました。佐藤被告は6月9日、豊島区内のホテルの一室で、その女性に対して『あなたの霊を祓えるのは俺だけだ。性行為でなければ祓えない』などと言って、犯行に及んだということです。佐藤被告は『合意の上だった。除霊と称して性行為をするなどあり得ない』と、こちらも容疑を否認しています」(全国紙社会部記者) 9月17日、東京地裁で佐藤被告の第2回公判が開かれた。その中で警察の取り調べでのAさんの供述調書のうち、佐藤被告が同意した部分(性的暴行に関する部分以外と思われる)のみが読み上げられた。そこから、佐藤被告が霊の存在をほのめかしながら、女性に近づいていく手口が明らかになってきたのだった。 ◆「間違いなく霊がいる」 Aさんが佐藤被告と知り合ったのは、突然、SNSアプリに送られてきたメッセージだったという。 「3月7日の朝5時ごろ、私のインスタグラムに『カナ』と名乗る人から、『精神的に病んだりしてないですか。私は実家がお寺で、小さい頃から見えるんです。あなたの投稿を見たときによくないものが見えたのでDMしました』という内容のメッセージがきていました。私は何が見えたのか気になったので、すぐに相手に『何が見えたのか?』と返信しました。 すると、『カナ』さんから『男性の生き霊が憑いています。このまま放置すると危ないですよ』というメッセージが返ってきたのです。さらに『正直、かなり危険な状態で祓わないとまずいです。生き霊がすぐそばにいるので、このことは誰にも話しちゃダメです』という返信があり、どうしたらいいか尋ねたところ、『普通のお寺や神社では祓えません。私の知り合いに祓える人がいて、その人しかできないと思います』と言われたのです」 恐怖に駆られたAさんは、「カナ」と名乗る人物に「祓える人」の紹介を頼んだという。それが佐藤被告だった。佐藤被告はビデオ通話で冒頭のように話してAさんの恐怖心をあおり、「東京までの交通費を払ってくれれば、お祓いのお金はいらない」と話し、Aさんが交通費を振り込むと、その日の夕方、Aさんの自宅にやってきたという。 「私の自宅に入ると、犯人(佐藤被告)は『間違いなく霊がいる。これはお祓いしないとダメだ』とポーチから数珠を取り出して、私の体にかざし、お経のようなものを唱えていました(以下、佐藤被告不同意部分のため読み上げられず。検察が主張する不同意性交が行われた部分と思われる)。 夜9時を回った頃、犯人は『祓いきれないから、1回休憩しよう。親子丼を作ってあげるよ』などと言って、スーパーに買い物に行くことになりました。食事が終わると、犯人はまた除霊を続けていました。 翌朝、目が覚めると、犯人はすでに起きていて、『女の霊が来た』などと言いながら部屋の中をウロウロしていました。私はさすがに勘弁してほしい、これ以上続くと気が狂いそうだと思いました(以下、佐藤被告不同意部分のため読み上げられず)」 ◆「警察を呼んだほうがいい」 「カナ」と佐藤被告は同一人物ではないかと疑ったAさんが、「カナ」のインスタグラムにダイレクトメッセージを送信すると、メッセージを送った瞬間、佐藤被告の携帯電話のバイブレーションが反応したという。状況を友人にLINEで説明したところ、「警察を呼んだほうがいい」と言われたため、Aさんは佐藤被告の隙を見て、警察に通報するための証拠を集め始めた。 「犯人は数珠やお経が書いてある本、白いタスキを持っていました。タスキの内側には名前や生年月日と思われるもの、さらに宗教団体の名前が書いてありました。そして、運転免許証を見つけて顔写真を確認すると、犯人のものだったので、携帯電話で撮影しました」 その後、3月9日の午前中に佐藤被告は「除霊」を終えて帰っていったという。いまのところ佐藤被告は否認しているが、Aさんは「除霊」と称して性的暴行を加えられたと証言している。 供述調書の最後には、佐藤被告への激しい怒りが述べられていた。 「こんな小説のような話をしても、信じてもらえないだろうと躊躇していましたが、どうしても犯人が許せなくて、警察に事件のことを相談に行きました。 (事件後)夜、眠れなくなり、睡眠薬と精神安定剤を処方してもらっています。精神科ではPTSDと診断されました。日常生活でも男性と2人きりで接する場面があると、状況が思い出されて体が固まってしまうので、そのようなシチュエーションのある仕事はできなくなりました。犯人には、できる限り重い処罰を与えてもらいたいと思っています」 「性的な行為は一切していない」と容疑を否認し続けている佐藤被告。今後、彼が罪を認め、心の傷を負ったAさんに対して謝罪の言葉を口にすることはあるのだろうか。 引き続き、審理が行われる予定だ。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit 取材・文:中平良

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