オランダ・ハーグにあり、戦争犯罪や人道に対する罪を裁く国際刑事裁判所(ICC、赤根智子所長)本体に対し、トランプ米政権が国内資産凍結などの制裁を科すことが懸念されている。ICC非加盟ながら国際金融ネットワークを握る米国の制裁対象になれば活動が困難になり、ICCは存続の危機に追い込まれる。国際社会で「法の支配」の一翼を担う司法機関が、それに加わっていない米国に命運を握られるという理不尽な事態だ。 「海の向こうの遠い話ではない」―。締約国は非難声明を発表し、日本国内でも、法の支配の崩壊に弁護士らが危機感を強めている。事態の打開に向け、締約国である日本政府の積極的な関与を求める声も上がっている。(共同通信=出口朋弘、小川美沙) × × ICC 戦争犯罪などを犯した個人を処罰するため、2002年7月に発効したローマ規程に基づき、世界で初めて常設された国際的な刑事裁判機関。検察局も抱える。加盟国・地域は125に上るが、米国、ロシア、中国、イスラエルなどは非加盟だ。加盟国の領域内で起きた犯罪はICCが管轄権を有するため、被疑者の国籍は問われない。日本は2007年に加盟した。2024年3月からは赤根氏が日本人初の所長を務める。日本は最大の分担金拠出国で、2025年予算で14・7%を負担している。