<袴田巌さん再審>袴田巌さん6億円賠償求めて提訴 警察・検察・裁判所に「冤罪責任」

1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件で、再審無罪が確定した袴田巌さん(89)が9日、国と県を相手取り約6億円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こした。逮捕・起訴した警察・検察に加えて、死刑判決を出して一度は確定させた裁判所の責任も問うている。袴田さん側は「訴訟を通じて冤罪(えんざい)の原因を究明する」としている。 静岡地裁の再審無罪判決(2024年9月)は、犯行時の犯人の着衣とされた「5点の衣類」は捜査機関により捏造(ねつぞう)されたものだと認定し、袴田さんに無罪を言い渡した。再審公判で有罪を主張した検察側は控訴を断念し、無罪は確定した。今回の国賠訴訟でも袴田さん側は、捜査機関による証拠の捏造の責任を追及する。 一方、畝本直美検事総長は控訴断念の際に談話を出し、証拠の捏造を強く否定。無罪判決の証拠の評価や認定に対して「大きな疑念」を表明した。国側は今回の訴訟で改めて捏造を否定し、捜査の違法性について争うとみられる。 強盗殺人などの容疑で66年8月に逮捕された袴田さんは、1審・静岡地裁の公判で無罪を主張したが、68年9月に死刑判決を言い渡された。東京高裁、最高裁も無罪主張を退け、80年に死刑が確定した。袴田さん側は訴状で、5点の衣類の捏造の可能性を検討せずに死刑判決を確定させた裁判所には重大な過失が認められると主張している。 2度目の再審請求で静岡地裁が14年3月、再審開始と死刑の執行停止を認める決定を出し、袴田さんは約48年ぶりに釈放された。しかし、拘置所で死刑執行を待つ中で精神はむしばまれ、現在も意思疎通が難しい状況が続く。 袴田さん側は、身体拘束期間中に得られたはずの収入や、死刑執行の恐怖にさらされた慰謝料を基に賠償額を算定した。 また、今回の訴訟とは別に、検事総長の談話により犯人視されて名誉を傷つけられたとして国に550万円の賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こしている。【藤渕志保】

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