大阪の名物「中国朝市」に一斉取り締まり 専門家「共生の仕組みを」

大阪市鶴見区と大東市にまたがる幹線道路沿いで開かれていた「中国朝市」で、府警による一斉の取り締まりが実施された。30年以上前から続く名物朝市だが、近年は違法露店や路上駐車などの迷惑行為が問題視されていた。 8月下旬の早朝。大阪メトロ・門真南駅から南に約1キロの大阪中央環状線沿いには、十数軒の屋台が並び、大勢の客でにぎわっていた。周囲は中国語が飛び交い、各店舗には日本のスーパーでは見かけない中国の野菜や果物などが売られていた。 毎週日曜朝に開かれる朝市は、1990年代から始まったとされる。中国残留孤児の家族らが食品店を開いたことから広まったとされ、近年はSNS(交流サイト)などでディープスポットとして紹介されるなど観光客も訪れている。 一方、にぎわいの裏で問題となっていたのが、店側や客による迷惑行為だ。 捜査関係者によると、多くの屋台は食品店の店先を間借りして営んでいるが、一部は歩道にはみ出して食材を陳列している店もあるという。周辺では多数の路上駐車などで近隣住民から苦情が寄せられていた。 近くに住む50代男性は「人が多く日曜の朝は歩道を通れない。過去には家の前に駐車されて、車が出せないことがあった」と話す。 中国系住民の暮らしに詳しい立命館大の駒見一善准教授によると、中国朝市では敷地内で営業している店に便乗して、道路使用許可を取らずに出店する違法行為が昔から確認されていた。 過去には海賊版DVDや無許可のたばこなどが並ぶ闇市のような時代もあったという。周辺では違法駐車のほか、水道が無断で使われるなど住民とのトラブルも起きてきた。 そのため朝市はたびたび府警による摘発を受けた。しかし、しばらくすると元通りになるという歴史を繰り返してきたという。 こうした事態を打開するため、所管する鶴見署は8月下旬に一斉取り締まりに着手。周辺にあった車両7台の駐車違反を検挙した。 今月1日には在留期間が切れた中国籍の男性を朝市で働かせたなどとして、中国食品店の経営者らを入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕。さらに20日までに不法就労していた男女7人を、同法違反(無許可活動など)容疑で逮捕や書類送検した。 この店の関係者は9月の取材時に「僕らは細々と商売しているだけ」と説明していた。 府警の取り締まり以降、朝市は開催されていない。捜査関係者は「再び迷惑行為が起きないよう、警戒を続けていく」と話す。 駒見准教授は「朝市のルーツである残留孤児は日本が背負ってきた歴史の一つでもある。違法行為を許してはいけないが、排除するだけではなく、地域と共生する仕組みを考える良い機会ではないか」と話した。【松原隼斗】

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