ルーブル美術館から155億円相当の宝飾品強奪、元刑事「犯人が逃走中に燃やした車両に注目、証拠隠滅か?」

フランス・パリのルーブル美術館で推定8800万ユーロ(約155億円)相当の宝飾品が強奪される事件が現地19日に発生した。日本人観光客にもおなじみである世界最大級の美術館で起きた宝飾品強盗事件を受け、犯人の思惑や盗品の行方、今後の捜査について、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が23日、当サイトの取材に対して見解を語った。 報道によると、4人組の窃盗グループが同美術館2階の窓ガラスを破壊して侵入し、宝石を散りばめたネックレスなどを盗み、バイクで逃走したという。盗品の中には、19世紀初頭の王妃のティアラやイヤリングなど歴史的な価値の高いものが含まれていた。一方、ナポレオン3世の妻・ウジェニー皇后の王冠が博物館の外で発見されており、犯人が逃走中に落とした可能性も考えられている。 こうした盗品を闇ルートで販売したとしても足がつく可能性は高い。解体して取り出した宝石などを裏市場で売ることも推測されるが、小川氏は「1回ばらしてから(付属品を)売るという可能性も否定はできないが、歴史的な価値があるからこそ相当の値打ちが付けられるわけで、そのことを考えると、カットし直して売るとかではなく、そのままの状態で秘密裡(り)の場で販売、転売されているのではないか」と指摘した。 ルーブル美術館から展示品が盗まれたケースは過去に何度かあった。最も有名なのは、1911年8月に発生した「モナ・リザ」盗難事件だ。レオナルド・ダ・ヴィンチによる世界的な絵画を狙った〝20世紀最大の美術品窃盗〟の犯人はイタリア人の男で、盗難から2年後に逮捕され、イタリアに持ち運ばれていた作品もルーブル美術館に返還された。犯人は「モナ・リザ」を自室に保管したまま、処置に困ってギャラリーのオーナーに連絡したことから足がついて逮捕に至ったとされている。 さらに、76年にシャルル10世の戴冠式で使われた剣が盗まれた。98年には絵画の盗難事件が2度起きているが、いずれも回収。小川氏は「意外と明らかにされていないのですが、盗品が元に戻されていたという状態で見つかったこともあるのです」と付け加えた。 このほか、世界的に有名な絵画の盗難としては、ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクの「叫び」が挙げられる。94年にオスロ国立美術館所蔵の油彩画が、2004年にはムンク美術館からテンペラ画がムンクの油彩画「マドンナ」と共に盗まれている(06年に発見)。小川氏は「『モナ・リザ』も一度盗難にあっていますし、ムンクの『叫び』など有名な絵画や他の美術品も盗難にあうことはよくあることです」と振り返った。 「モナ・リザ」も「叫び」も回収されたが、今回の事件は捜査が難航するとみられている。パリ検察の検察官は地元メディアを通して、「経済的損害」以上に「歴史的損害」を嘆いた。金銭面ではなく、歴史的な文化遺産が損なわれたことのダメージは大きい。 今後の捜査について,小川氏は「国外逃亡した人間に対してICPO(国際刑事警察機構)の手配がありますが、美術品についても『盗難美術品手配』というものが国際手配の中にあります。また、昨年できて、今年1月からシルバー手配、銀色手配と言われていますが、『盗品がどういうルートでどこにあるのか、捕まえるところまではいってないが、ここにあり追跡出来ている』という情報を共有するシステムもできている。ICPOはフランスに本部があるので、自国の美術館での盗難を指をくわえてみていることはないと私はみています」と解説した。 さらに、小川氏は「約7分で奪って、オートバイ2台で犯人は逃走しているのですけど、今のところは盗品からの捜査、防犯カメラからの捜査が頼りになる。また、今回、逃走に使った車両を燃やそうとしていたということが気になります。つまり、証拠隠滅を図りたかったということで、それは車両の中になにがしかの容疑者につながるもの、例えば指紋やDNA鑑定が可能な遺留品等があるのではということが言えると思います」とも付け加えた。 その上で、同氏は「今回の事件は犯人を捕まえればいいということよりも、盗まれた美術品の返還が第一です。犯人逮捕はもちろんですけど、盗品がどこにあり、どのように押収して返還できるかということが一番重要になってきます」と強調した。 (デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする