NBPA(NBAの選手労働組合)は、違法賭博関与の疑いが持たれているテリー・ロジアー(マイアミ・ヒート)に対して、NBAが無給の休職処分を下したことに異議を申し立てる意向だ。 ロジアーは、シャーロット・ホーネッツ在籍時代の2023年3月、ニューオーリンズ・ペリカンズとの一戦で賭博師と結託。自身のスコアがアンダー(設定したスコアよりも下と予想)になるよう試合開始10分で負傷退場してベッティングを幇助し、利益を得たとされている。 FBIの捜査の末、逮捕および起訴されたロジアーについて、NBAもすぐさま対応を求められた。リーグは10月24日、同選手の連邦起訴状を審査中であることを明らかにすると同時に、ロジアーが球団から即時出場停止処分を受けたことを発表。同時に、関係当局への協力姿勢を示し、ゲームの平等性が最優先であることを改めて強調した。 現在、焦点になっている点は、選手の給与問題だ。今シーズン、ロジアーは球団と約2600万ドル(約40億円)の契約を結んでいる。だが、今週中に支払われる予定だった初回の給与はこの一件で保留となり、エスクロー口座で凍結されることに。結果として、ロジアーは無給処分となった。 しかし、NBPAは“推定無罪の原則”を主張し、ロジアーの権利が保持されるべきだと声明を発表している。 「リーグと同様に、試合の公正性を守ることが最も重要だと考えています。しかし、無給休職という決定は“推定無罪の原則”に反し、労使協定の内容にも一致しません。我々は正式な手続きを通じてこの決定に異議を申し立てる予定です」 “推定無罪の原則”とは、刑事裁判で有罪判決が確定するまで、被疑者・被告人は無罪として扱われるべきであるという、近代刑事司法の基本原則である。選手会側は、ロジアーは現状無罪であることから、球団からの支払いは契約通りに行われるべきだと主張しているのだ。 FBIは逮捕に踏み切ったものの、NBAは2年前にロジアーの不審な行動を受けて独自調査を実施。そして、当時は選手側に「問題はなかった」と結論づけていた。それにもかかわらず、リーグは今回の逮捕直後にロジアーを即時休職、無給処分としており、選手会はプレーヤーを守る立場として異議を唱えたというわけだ。 『The Athletic』によると、労使協定(CBA)では逮捕された選手に対してチームが懲戒処分を行う権限を定めている一方、「無給での活動禁止」までは明記していないという。 なお、選手の弁護人は無罪を主張。世界を震撼させた一大スキャンダルは今後、ロジアーの年俸の行方、ならびにNBAとNBPAの労使協定に倣った法的攻防も焦点となるだろう。 文=Meiji