自民・鈴木貴子氏「家宅捜索に入った捜査員は…」父宗男氏の事件の経験を告白「私の通知表も…」

自民党の鈴木貴子広報本部長(39)は7日の衆院予算委員会で質問した際、高市早苗首相が所信表明演説で再審制度の見直しに触れたことに言及した、自身の父、鈴木宗男参院議員(77)がかつて受託収賄の罪に問われた際、中学生だった自身が経験した自宅への家宅捜索の「現実」や当時感じた思いを、赤裸々に告白した。 貴子氏は、高市首相が所信表明演説で再審制度の見直しについて検討を進める考えを示したことに触れ、「所信で再審法に触れるのは異例中の異例」と主張。再審で無罪が確定するまで逮捕から58年の年月がかかった袴田巌さんの「救援議員連盟」の事務局長を、自身が13年間務めていることを明かし「(高市首相の所信表明を)期待とともに受けとめさせていただいた。参院本会議の答弁でも『政府として責任を持って迅速に検討を進める』と明言していただいた」と述べ、「法制審(法制審議会)の運びには、いくつか懸念がある」とも指摘。「法制審まかせにするのではなく、何のため、だれのための再審制度改革かという原点に立ち返り、冤罪(えんざい)をなくし、真に国民の信頼に足る司法制度を構築するという意思を政治が示していくべきだと思っている」と訴えた。 貴子氏はその上で、「あくまでも私や私の家族の経験だが」と、名前は出さなかったものの、宗男氏の事件での経験を回顧。「家宅捜索に入ってきた捜査官は、わが家の居間で腕まくらをして、テレビを見ていた。平べったい段ボールを開き、箱を作り、自ら持ってきた自分のかばんを入れ、箱を閉めようとした。当時、中学生の私が使っていた英会話学習のテープや教材も箱の中に詰めて持っていこうとした。テーブルの上のティッシュ、私の通知表も」と述べ「何のための押収だったのか、いまだに分からない。私の母が『なにを、そこで寝そべっているんですか。やることをやってください』と声をかけ、いそいそと立ち上がられた(捜査員の)姿を、私の家族は一生忘れることはない」と主張した。 宗男氏の逮捕からの勾留日数は、437日にのぼった。貴子氏は「真実を訴え続けた結果、戦後最長437日間の勾留だった。その間、家族はだれ1人接見禁止という判断だったが、なぜか夏休み期間中に留学先のカナダから帰ってきた私だけは、『高校生の娘さんだけはお父さんに会わせましょう』と連絡をもらった」と振り返り、「里心をつけさせ、検察が作った調書にサインをさせようという思惑があったのではないだろうかと。真意は分かりませんが、『家で父の帰りを待ちます』と伝えた、あの時の気持ちというものはこれまた忘れることができないし、あのようなくやしい思いを私はだれひとりにもさせたくない」と主張。「これからも不条理と目の前に課題があるのであれば、それを善処させていきたい。政治家としての国民の代表としての責務と思っている」と述べた。 貴子氏はさらに、「死刑囚とされた袴田巌さんにはひとり息子さんがいる。58年間、断絶です。まさに再審が決まる直前に、袴田さんが出先のおみやげ屋さんで、クマの小さいぬいぐるみを買われた。『明日、息子が来るから渡してやるんだ』と。今でもそのぬいぐるみは、巌さんのご自宅の棚に飾られています。これが、冤罪のもたらす事実です」と、声を詰まらせながら訴えた。 「58年間、ようやく無実となっても帰ってこない時間があるということ。どうか高市総理、日本が世界の真ん中で咲き誇るため、私は法の下の平等や基本的人権、こういったものがあって初めて、私は世界で咲き誇ることができる、初めて日本が世界でいちばん安全、安心な国だと言えることができると思っている。今後の再審法改正に向けて、どのような思いで挑まれるのか、スピード感も含めてぜひともご教示いただきたい」と、見解を求めた。 答弁に立った高市首相は「再審制度は、十分な手続き保障と、三審制度のもとで確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった時、これを是正する非常救済の手続き。私はこの再審制度が適切に機能することが重要と考えた。自民党の総裁選挙でも訴えたし、さきの演説でもこれをあえて入れ込んだ」と述べた。「先般、法務大臣に再審制度の見直しについて、必要な検討を行うように指示いたしました。この再審制度について規定されている刑事訴訟法は法務省の所管ですから、現在、法制審議会でさまざま難しい議論がされていることは承知している。内閣総理大臣としては議論を見守ると言わざるを得ないのでしょうが、法務大臣に指示をしたので、政府の責任において迅速に検討を進めてまいりたい」とも応じた。 貴子氏は「経済や技術力だけではなく、真の正義や法の下の平等とは何なのか、基本的人権とは何なのか、私は、高市総理のリーダーシップのもとでお示しいただけるものと期待をしています」と訴えた。 宗男氏は、北海道開発局の工事をめぐる汚職事件などで2010年、懲役2年、追徴金1100万円の有罪が確定し、その後服役した。2012年に再審を請求。東京地裁は2019年、東京高裁は昨年3月、いずれも請求を認めない決定を出している。

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