モペット取り締まりに記者が同行 呼び止められたライダーの言い分

大阪の繁華街・ミナミで深夜、私服姿の警察官が目を光らせる。視線の先にあるのは、ペダル付き電動バイク「モペット」だ。ヘルメット未着用やナンバープレートがないなど違法な使われ方も多い。ネオン街に溶け込む捜査員に呼び止められたモペットライダーたちの言い分は――。 モペットは自転車のような見た目だが、最高速度が時速20キロを超える車両は「原付きバイク」や「オートバイ」と同じ扱いで、運転には免許も必要となる。ミナミを中心に目立つ違法モペットの根絶に向け、大阪府警南署などが最終手段として掲げるのが「夜間集中取り締まり」だ。記者は11月、取り締まりに繰り出す捜査員に同行した。 ◇不服そうに主張「これは自転車」 大阪市中央区の飲食店街で午後11時半ごろ、捜査員らの目の前にナンバープレートがないモペットが飛び込んできた。運転手はヘルメットも着けていなかった。 捜査員に呼び止められた女性は「これは自転車だ」と主張したが、ハンドル部をひねると最高速度が時速40キロ以上の車両だと確認された。女性は「免許が必要とは全く思わなかった。ほかの人たちも知らないと思いますよ」と不服そうだ。この夜、記者が同行した2時間で複数人が無免許運転などの違反で検挙された。 この夜間集中取り締まりは、若者らによる違法走行が深夜帯に集中することを念頭に置いたもので、9月中旬から始めた。検挙件数は9月が18件、10月が28件。11月は37件に上り、昼夜を合わせた今年の検挙件数の半数にも及ぶ。 取り締まりを指揮した南署交通課の塩崎敏之課長代理は「自転車感覚での違法走行は、歩行者が重大な事故に巻き込まれる危険性があり脅威だ。自転車ではなくバイクだと再認識してもらいたい」と力を込める。 近年、まちにはモペットだけでなく、多様な電動モビリティーがあふれている。時速20キロ以下で走る電動キックスケーターは「特定小型原動機付き自転車(特定小型)」に区分され、免許は不要だ。それぞれ異なるルールが利用者の混乱を招いている可能性もある。 ◇販売店「最後まで責任を持つ」 府警は6月、違法走行すると知りながら客にモペットを販売したとしてミナミにある販売店の経営者らを道路交通法違反ほう助容疑などで逮捕。モペットを免許不要の「特定小型」と偽って販売した詐欺などの疑いでも書類送検するなど、売る側にも捜査の手を伸ばした。 事件後、営業を再開した店舗の中国人女性経営者は毎日新聞の取材に「悪いことだと思っていなかったから、警察が突然やってきた時はびっくりした」と振り返る。日本の法律に関する知識が不足したまま営業していたと説明した。 現在は、購入者に対して返品に応じたほか、ナンバープレート取得も無料で実施しているという。「多くの車両を購入してもらったので、逃げずに最後まで責任を持つ。警察にアドバイスをもらいながら営業を続けたい」と話す。 電動モビリティーを安全に利用してもらえるよう取り組む事業者もいる。大阪市中央区で特定小型などを販売する「Senba Garage(センバガレージ)」では、購入者に冊子を配布し、車両区分や交通ルールを丁寧に説明することで誤解が生まれないよう努めている。 山口優大マネジャーは「ルールの違いは世間には認知されていない。電動モビリティーは本当はすごく便利なものなので、ルールを知って正しく利用してほしい」と訴えた。【松原隼斗】

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